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6 ガソリンスタンド過疎地における休業日の調整(休日輪番制)

6 ガソリンスタンド過疎地における休業日の調整(休日輪番制)

 事業者団体が、特定のガソリンスタンド過疎地において、会員が経営するガソリンスタンド間で休業日を調整する取組を行うことについて、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例  

1 相談者

 X組合(ガソリンスタンドを運営するガソリン等販売事業者を組合員とする石油商業組合)及びその上部団体(各都道府県の石油商業組合を構成員とする連合会) 

2 相談の要旨

⑴  レギュラーガソリン等の給油や灯油の配送等を通じて、石油製品等を需要者に販売するガソリンスタンド(サービスステーションともいい、以下「SS」という。)は、国民生活や経済活動を支える重要かつ不可欠な社会インフラとされている。一方で、SSを運営する事業者の多くは中小零細企業であり、乗用車の燃費向上等により石油製品の需要が減少する中、働き手不足・後継者難、施設の老朽化等の課題も相まって、SS数も減少を続けており、平時のみならず災害時の「最後の砦」として地域を支えるSSネットワークの維持・強化に向けた取組の強化が喫緊の課題とされている。

   【参考】「第7次エネルギー基本計画」令和7年2月18日閣議決定


⑵  X組合の組合員の中には、市町村内のSSが3か所以下の自治体(以下「SS過疎地」という。)でSSを運営する組合員が複数いる。その中には、地域の燃料供給を担うエッセンシャルワーカーとして、年に数日程度の休業日以外は毎日営業する組合員が複数いる。それらのSSを経営する組合員の中には、働き手不足の影響から十分な従業員数を確保することができず、厳しい労働環境下でSS事業を維持している組合員が多く、また、経営者を含めた働き手の高齢化も進んでおりSS事業を引き継ぐ者がいない組合員も多い。


⑶  X組合は、SS過疎地におけるSSネットワークの維持のためには、経営者を含めた働き手の身体的負担を軽減し、労働環境を改善することが必要な方策の一つと考えている。一方で、SS過疎地で営業するSSの休業に当たっては、当該地域内への燃料供給体制の確保を図る必要があり、同一のSS過疎地内に所在するSSの一斉休業は回避しなければならないと考えている。


⑷  そこで、X組合は、同一のSS過疎地内に所在する複数の組合員を対象に、X組合が主導して、次のアからウまでの内容で当該組合員の休業日が重ならないように調整すること(以下「本件取組」という。)を検討している。

  ア  X組合は、同一のSS過疎地内に所在する組合員から休業日調整の希望の有無を聴取し、休業日調整の対象となる組合員を決定する。この際、X組合は同組合員に対し、休業日調整への参加を強制しない。

  イ  X組合は、休業日調整に任意で参加する組合員(以下「参加組合員」という。)の間で、休業日が重ならないように各参加組合員が休業できる日(以下「休業予定日」という。)を調整する。この調整過程に特定の事業者を差別的に取り扱う内容は含まれず、また、各参加組合員が休業予定日に営業することを妨げない。

  ウ  休業予定日に休業する参加組合員は、事前に休業日を店頭で周知し、当該参加組合員のSSでの給油等を希望する需要者が、休業日前に給油等を行えるようにする。


 本件取組は、独占禁止法上問題となるか。



○本件取組の概要図

3 独占禁止法上の考え方

⑴  営業の種類、内容、方法等は、事業者間の競争の手段となり得るものであり、事業者団体がこれを制限することにより競争を阻害することは、独占禁止法上問題となるおそれがある(独占禁止法第8条第3号、第4号及び第5号)。

   事業者団体が正当と考える目的に基づいて事業者の休業予定日について調整を行うなどの自主規制等における競争阻害性の有無については、①競争手段を制限し需要者の利益を不当に害するものではないか、及び②事業者間で不当に差別的なものではないかの判断基準に照らし、③社会公共的な目的等正当な目的に基づいて合理的に必要とされる範囲内のものかの要素を勘案しつつ、判断される。

   また、自主規制等の利用・遵守については、構成事業者の任意の判断に委ねられるべきであって、事業者団体が自主規制等の利用・遵守を構成事業者に強制することは、一般的には独占禁止法上問題となるおそれがある(事業者団体ガイドライン第2-8⑵(自主規制等))。


⑵  本件取組は、

  ア  SS過疎地におけるSSネットワークの維持のために必要な方策の一つと考えられる経営者を含めた働き手の身体的負担の軽減と、SS過疎地内における燃料供給体制の確保との両立を図るという取組の目的が正当であること

  イ  次の点から、競争手段を制限し需要者の利益を不当に害するものとはいえないこと

   (ア) 各参加組合員の休業予定日を調整するにすぎず、各参加組合員が自己の休業予定日とされた日に営業することは妨げられず、各参加組合員の営業日や休業日の設定の自由を拘束するものではないことから、参加組合員の競争手段を制限するものではないこと

   (イ) 調整した休業予定日に休業する参加組合員は事前に休業日を店頭で周知するため、当該参加組合員のSSでの給油等を希望する需要者は休業日前に給油等を行えるほか、当該参加組合員の休業日に給油等を希望する需要者は、同一のSS過疎地内で休業していない他の参加組合員のSSで給油等ができることから、需要者の利益を不当に害するものではないこと

  ウ  事業者間で不当に差別的な内容となっていないこと

 から、独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答

  本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。 

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