令和3年2月17日
公正取引委員会
第1 調査主旨等
消費者から提供される個人情報等の様々なデータを集積・利用したデジタル広告事業は,デジタル・プラットフォーム事業者の収益源として大きな存在となっている。また,デジタル・プラットフォーム事業者は,デジタル広告について,掲載メディア(媒体社)と広告出稿者(広告主,広告代理店)を結びつけるプラットフォームとして重要な役割を担っている。一方で従来から広告事業により収益を得ていたメディア(媒体社)にとっては,収益構造の変化を余儀なくされており,デジタル広告に関するデジタル・プラットフォーム事業者の事業の在り方がメディアの事業に大きな影響を及ぼすようになっている。
こうした状況を踏まえ,デジタル広告分野におけるデジタル・プラットフォーム事業者を取り巻く取引実態や競争の状況を明らかにし,指摘される問題及びそれに対する独占禁止法上又は競争政策上の考え方を示すことで,当該分野における独占禁止法違反行為の未然防止や関係者による公正かつ自由な競争環境の確保に向けた取組を促進するため,公正取引委員会はデジタル広告の取引実態に関する調査を実施することとした。
1 調査対象
デジタル広告の掲載メディア(媒体社),広告出稿者(広告主・広告代理店)及び広告仲介事業者等がデジタル・プラットフォーム事業者と行う取引について調査を実施した。
2 調査方法
(1) 事業者及び消費者向けアンケート調査※
令和2年2月から同年3月までにかけて,デジタル広告分野のデジタル・プラットフォーム事業者と直接・間接に取引関係がある事業者を,①広告主・広告代理店,②広告仲介事業者及び③媒体社の3つのカテゴリーに分け,それぞれに対して,デジタル・プラットフォーム事業者との取引等に関するアンケート調査を行った。
また,検索連動型広告とSNS等における広告について,消費者の無料サービスや表示される広告に対する受け止め,ユーザーデータの利活用の理解の程度などを,調査会社の消費者モニターに対するアンケートの形で調査した。
(※参考) |
(2) 聴取調査
89名(広告主,広告代理店,広告仲介事業者,媒体社等の事業者及び事業者団体78名,デジタル・プラットフォーム事業者5名,有識者6名)に対して実施した。
(3) 情報提供窓口を通じた調査
公正取引委員会のウェブサイト上において,21件の情報提供を受けた(令和3年2月1日時点)。
第2 調査結果
報告書本体,別紙及び概要参照。
第3 今後の取組
1 本報告書で指摘したデジタル広告分野における取引実態の各論点に関するものを含め,独占禁止法上問題となる具体的な案件に接した場合には,引き続き厳正に対処していく。
2 イノベーションの芽が摘まれることがないよう,デジタル分野の企業結合について,令和元年に改定したガイドライン等を踏まえ,引き続き迅速かつ的確な審査を行っていく。
3 本報告書で指摘した媒体社間の競争の変化のように,デジタル・プラットフォーム事業者の台頭による影響を受けて変化する市場における競争の状況についても注視し,引き続き,デジタル分野についての実態調査を行い,消費者利益を勘案しつつ独占禁止法・競争政策上の問題を明らかにしていく。
4 デジタル・プラットフォームを巡る競争環境の整備のためには独占禁止法の執行だけでなく,デジタルプラットフォーム取引透明化法[1]その他の規律による適切な規制,データの移転・開放を実現する仕組みの導入,個人情報の適切な保護など様々な観点から検討・対応していく必要がある。公正取引委員会は,内閣に設置されたデジタル市場競争本部や関係省庁との連携・協力に積極的に取り組み,競争環境の整備を図っていく。
5 グローバルに展開するデジタル・プラットフォーム事業者の事業活動に対しては,海外の各国・地域の競争当局も大きな関心・懸念を寄せている。公正取引委員会は,今後とも様々なレベルで,各国・地域の競争当局との意見交換を行い,また,ICN(国際競争ネットワーク)等の場を活用して継続的な協力を進めていく。
[1] 特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律
公正取引委員会は,「デジタル・プラットフォーマーに関する取引実態や利用状況についての情報提供窓口」を通じて,デジタル広告を含むデジタル・プラットフォームに関する情報の提供を引き続き受け付けておりますので,今後とも,事業者や消費者の皆様におかれましては,幅広い情報提供をお願い申し上げます。 |
関連ファイル
(印刷用)(令和3年2月17日)デジタル・プラットフォーム事業者の取引慣行等に関する実態調査(デジタル広告分野)について(最終報告)
報告書本体
※令和3年3月1日,「報告書本体」79頁,上から2つ目の表内に誤植がありましたので,修正しました。
修正前:「システム変更の際に問題・課題があった旨の回答の状況」
修正後:「サービス接続に必要なアカウントの審査基準に係る回答の状況」
問い合わせ先
公正取引委員会事務総局経済取引局総務課 デジタル市場企画調査室 実態調査担当
電話 03-3581-1889(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/