令和6年3月6日
公正取引委員会
第1 調査趣旨等
近年、若年層を中心に、テレビ放送の視聴時間が大きく減少する一方、動画配信サービス等の利用率・利用時間は増加してきている。
消費者が動画配信サービス等を利用する場合に用いる機器としては、スマートフォンやタブレット等のほか、「コネクテッドTV」(インターネットに接続する機能を内蔵したテレビ(スマートテレビ)又はテレビ接続機器(ストリーミングデバイス))が近年普及してきており、コネクテッドTVを利用して動画配信サービス等を利用する者が増えている。このコネクテッドTVに関しては、近年の利用拡大に伴って、コネクテッドTVに内蔵されているオペレーティングシステム(テレビ向けOS)を提供している世界規模のデジタルプラットフォーム事業者(Amazon、Google)の支配力が強まってきていることへの懸念などが指摘されている。
テレビ向けOS提供事業者等の行為によって、動画配信サービス提供事業者が不当に排除されたり、不当に不利益を受けたりする場合には、動画配信サービス提供事業者やコンテンツプロバイダー(動画コンテンツを動画配信サービス提供事業者等に提供する主体をいう。)による創意工夫の発揮が妨げられるおそれがある。このような場合には、多様で良質なコンテンツの配信が損なわれ、消費者に不利益が生じるおそれがある。
このため、公正取引委員会は、コネクテッドTV及びコネクテッドTVを通じて提供される動画配信サービス等を対象とするコネクテッドTV関連分野について、競争状況を評価するとともに、プラットフォーム事業者により独占禁止法上・競争政策上の問題が引き起こされていないかを把握し、問題があれば公正な競争環境の確保を図るために必要な対応を講じるため、コネクテッドTV及び動画配信サービス等に関する実態調査(以下「本調査」という。)を実施した。
1 調査対象
我が国におけるテレビ向けOS及び動画配信サービス等の市場について、事業者の地位、シェア等の市場構造や市場の特性、市場における競争状況を調査するとともに、これらの市場における競争上の課題について調査を行った。
2 調査方法
(1) 消費者アンケート及び事業者アンケート調査
ア 消費者アンケート
令和5年7月に、コネクテッドTV及び動画配信サービス等に関する消費者の利用状況などを、調査会社の消費者モニター(4,000名)に対するアンケートの形で調査した。
イ 事業者アンケート
動画配信サービス提供事業者を対象として、コンテンツプロバイダー、テレビ向けOS提供事業者及び消費者との間の各取引実態等について、アンケート調査を行った(回答者数:22社)。
なお、本調査の過程において、動画配信サービス提供事業者2社に対して独占禁止法第40条に基づく報告命令を実施した。
(2) 聴取調査
テレビ向けOS提供事業者や動画配信サービス提供事業者を含むコネクテッドTV関連分野において商品・サービスを提供する関係事業者の中から、業種や規模などを考慮し、43社に対してヒアリング等を実施した。
また、主たるテレビ向けOS提供事業者2社(Amazon及びGoogle)に対して書面での質問等を送付するなどして意見を聴取した。
このほか、コネクテッドTV関連分野に関わりのある分野を所管する官公庁1機関と意見交換を実施した。
(3) 国際協力
本報告書の取りまとめの過程において、インド競争委員会及び韓国公正取引委員会との間において、各当局の実施した調査等に関する意見交換等を行った。
第2 調査結果
報告書本体、別紙及び概要参照。
第3 今後の取組
1 テレビ向けOS提供事業者や動画配信サービス提供事業者を始めとしたコネクテッドTV関連分野の関係者に対して、本報告書の内容について周知を行うとともに、引き続き、関係省庁等との連携・協力に積極的に取り組み、公正な競争環境の確保を図っていく。
2 Amazonによる手数料の徴収に係る新ポリシーの適用状況を含め、コネクテッドTV関連分野における競争の状況を引き続き注視していく。
3 テレビ向けOS提供事業者や動画配信サービス提供事業者等に関し、独占禁止法上問題となる具体的な案件に接した場合には、本調査で得た知見を活用して、厳正・的確に対処していく。
4 グローバルに展開するデジタルプラットフォーム事業者の事業活動に対しては、海外の各国・地域の競争当局も大きな関心・懸念を寄せているため、様々なレベルで各国・地域の競争当局との意見交換を行うとともに、ICN(国際競争ネットワーク)やOECD(経済協力開発機構)等の場も活用しながら、本調査で得た問題意識や知見を率先して共有しつつ、海外関係当局と継続的に連携し、競争環境の整備を図っていく。
公正取引委員会は、「デジタル分野における市場の実態やデジタルプラットフォーム事業者との取引状況等についての情報提供窓口」を通じて、デジタル分野における市場の実態や、デジタルプラットフォーム事業者との取引状況等に関する情報の提供を引き続き受け付けておりますので、今後とも、事業者や消費者の皆様におかれましては、本調査で指摘した点を含め、幅広い情報提供をお願い申し上げます。 |
関連ファイル
(印刷用)(令和6年3月6日)コネクテッドTV及び動画配信サービス等に関する実態調査報告書について



問い合わせ先
公正取引委員会事務総局経済取引局総務課 デジタル市場企画調査室 実態調査担当
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