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(令和7年9月18日)ハーレーダビッドソンジャパン株式会社に対する排除措置命令及び課徴金納付命令について

(令和7年9月18日)ハーレーダビッドソンジャパン株式会社に対する排除措置命令及び課徴金納付命令について

令和7年9月18日
公正取引委員会


公正取引委員会は、ハーレーダビッドソンジャパン株式会社(以下「ハーレーダビッドソンジャパン」という。)に対し、本日、独占禁止法の規定に基づき排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。

本件は、ハーレーダビッドソンジャパンが、独占禁止法第19条(同法第2条第9項第5号(優越的地位の濫用))の規定に違反する行為を行っていたものである。

1 違反行為者及び課徴金額

法人番号 2010401023943
名称 ハーレーダビッドソンジャパン株式会社
所在地 東京都新宿区新宿六丁目27番30号新宿イーストサイドスクエア5F
代表者 代表取締役 玉木 一史
事業の概要 自動二輪車の卸売業等
課徴金額 2億1147万円

2 HD車両に関する取引の概要等(詳細は別添排除措置命令書参照)

⑴ ハーレーダビッドソンジャパンは、自社がアメリカ合衆国に所在するハーレーダビッドソン・モーター・カンパニー・インク及びシンガポール共和国に所在するハーレーダビッドソン・アジアパシフィック・プライベート・リミテッドから仕入れたHD車両(注1)等のハーレーダビッドソン商品(以下「HD商品」という。)のほとんど全てを、自社とディーラー契約(注2)を締結する事業者(以下「ディーラー」という。)に対して販売している。ディーラーは、原則として、ハーレーダビッドソンジャパンから買取りの方法で仕入れたHD商品を、ディーラー契約に基づき運営する販売拠点(以下「販売拠点」という。)において、顧客に対して販売している。

(注1)「HD車両」とは、ハーレーダビッドソンブランドの自動二輪車(「トライク」と称する自動三輪車を含む。)をいう。

(注2)「ディーラー契約」とは、ハーレーダビッドソンジャパンと取引の相手方との間で締結される、HD商品の販売の条件等について規定する契約(当該契約に付随する契約を含む。)をいう。通常、契約期間が3年間であり、契約期間満了後に自動更新されることはない。

⑵ 令和5年及び令和6年におけるHD車両の新規登録の台数は、いずれも我が国における輸入小型自動二輪車の新規登録の台数の順位において第1位であった。

⑶ 大部分の特定ディーラー(注3)は、ディーラー契約等において規定する要件を満たすため、販売拠点の設備等に対し多額の投資を行っていた。

また、特定ディーラーは、いずれも、総売上高に占めるHD商品に係る売上高の割合が高い者であった。加えて、特定ディーラーの中には、他の事業者との取引開始や拡大によっては、HD商品に係る売上高と同等の売上高を確保することは困難である者が存在していた。

(注3)「特定ディーラー」とは、ディーラーのうち、ハーレーダビッドソンジャパンの取引上の地位が優越していた者であると排除措置命令書及び課徴金納付命令書において公正取引委員会が認定し、同命令書の別表で掲げた者をいう。

⑷ 前記⑵及び⑶の事情等により、特定ディーラーにとっては、ハーレーダビッドソンジャパンとの取引を継続することができなくなれば事業経営上大きな支障を来すこととなり、このため、特定ディーラーは、ハーレーダビッドソンジャパンからの著しく不利益な要請を受け入れざるを得ないような立場にあった。

⑸ア ディーラーは、ディーラー契約において、ハーレーダビッドソンジャパンとの間で設定するRSO(注4)を達成することを義務付けられていた。

イ ハーレーダビッドソンジャパンは、毎年1月に、当該年に適用されるRSOの案を記載した「合意書」と称する文書(以下「合意書」という。)をディーラーに提示し、ディーラーに対し、署名押印済みの合意書を提出させるなどして、当該年のRSOを決めていた。

ウ ハーレーダビッドソンジャパンは、RSWR登録(注5)の数をRSOに対する実績として扱っており、RSWR登録には、基本的には、RETAIL登録(注6)とEX-DEMO登録(注7)の2種類があった。

(注4)「RSO」(Retail Sales Outlet)とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間におけるHD車両の販売拠点ごとの小売販売目標台数(四半期ごと又は月ごとに細分化されたものを含む。)をいう。

(注5)「RSWR登録」(Retail Sales Warranty Registration)とは、HD車両のメーカー保証を開始するためにディーラーが行う登録をいう。

(注6)「RETAIL登録」とは、新車の状態のHD車両の販売の事実に基づきディーラーが行うRSWR登録をいう。

(注7)「EX-DEMO登録」とは、販売拠点において試乗車として利用されていたHD車両の販売の事実に基づきディーラーが行うRSWR登録をいう。

⑹ア ハーレーダビッドソンジャパンは、RSOの達成率、販売拠点の設備、人員の充実度等を評価項目としたB&Sプログラムと称する評価基準を設け、ディーラーが獲得した点数の合計(以下「B&Sプログラムの獲得点数」という。)に応じて、四半期ごとにディーラーを評価していた。

イ ハーレーダビッドソンジャパンは、四半期ごとに、B&Sプログラムの獲得点数が一定の水準に満たないなどのディーラーに対して、NGS評価(注8)を下していた。

NGS評価を2回連続で下されたディーラーは、H-D1プログラム(注9)に基づく報酬金の支払が取り消されることとなっていたほか、ハーレーダビッドソンジャパンがディーラー契約を更新しない可能性や、ハーレーダビッドソンジャパンからHD商品に係る販売等の事業の他の事業者への譲渡等を要請される可能性があった。

このため、特定ディーラーは、このようなNGS評価に伴う取扱いを避けるためにRSOの達成率を上げる必要があると認識していた。

ウ ハーレーダビッドソンジャパンは、ディーラーが販売拠点に設置しなければならない展示車及び試乗車の台数等を内容とするモデルリストを策定しており、ディーラーに対して、その遵守義務を課していた。

(注8)「NGS(Not in Good Standing)評価」とは、ディーラーに対する低い評価であり、令和5年においては、B&Sプログラムの獲得点数が全ディーラーの下位10パーセントとなったディーラー、月ごとのRSOの達成率が1回以上80パーセントを下回ったディーラー等がNGS評価を下されることとなっていた。また、令和6年においては、B&Sプログラムの獲得点数が 全ディーラーの下位10パーセントであって、かつ、全ディーラーの平均点数の70パーセント以下であるディーラー等がNGS評価を下されることとなっていた。

(注9)「H-D1プログラム」とは、ハーレーダビッドソンジャパンがディーラーに対して適用する、RSOの達成率等を評価項目とした報酬金に関する支払基準をいう。

⑺ 特定ディーラーがRSOの達成率を上げるために採っていた手段として、顧客への販売のほか、自社登録(注10)があった。

特定ディーラーがRETAIL登録による自社登録を行った場合、対象としたHD車両の販売価格は、新車としての販売価格を下回る販売価格となっており、仕入価格を下回る販売価格となる場合もあった。

また、特定ディーラーがEX-DEMO登録による自社登録を行った場合、特定ディーラーは、対象としたHD車両を試乗車としてより長く利用できるはずであったにもかかわらず利用できなくなり、モデルリストを遵守するために新たな試乗車の仕入れが必要となる場合があったほか、当該自社登録をしたHD車両の仕入代金の支払期日が試乗車として利用し続けた場合と比較して早まる場合があった。

(注10)「自社登録」とは、RETAIL登録又はEX-DEMO登録のうち、ディーラーが自ら又は自らの従業員等を名義人として登録しており、当該名義人を相手方とする実際の売上げ又はその見込みが存在しなかったものをいう。

3 違反行為の概要(詳細は別添排除措置命令書参照)

ハーレーダビッドソンジャパンは、遅くとも令和5年1月31日以降、特定ディーラーに対し、自社登録を行わなければ達成できないようなRSOを、次の⑴のとおり、一方的に決めた上で、次の⑵の方法等により、当該RSOに従って事業活動を行うことを余儀なくさせていた。

⑴ ハーレーダビッドソンジャパンは、特定ディーラーに合意書を提示するまでの間に、合意書に記載するRSOの案に関して、特定ディーラーとの協議を行っておらず、特定ディーラーに対して意見を述べる機会も与えていなかった。

また、特定ディーラーに合意書を提示してから署名押印済みの合意書を提出させるまでの間に、合意書に記載したRSOの案の算定の根拠等を、特定ディーラーに対して十分に説明することはなかったほか、特定ディーラーがRSOの案の数値について意見を述べ、又は下方修正を要請したとしても、特定ディーラーとの協議を行うことはほとんどなく、RSOの案を下方修正することもなかった。

そして、ハーレーダビッドソンジャパンは、特定ディーラーに署名押印済みの合意書を提出させるなどして、特定ディーラーとの間で、合意書に記載されたとおりのRSOを決めていた。

⑵ ハーレーダビッドソンジャパンは、ディーラーにおけるRSOの達成率が一定割合に満たなかったことなどの結果、ディーラーがNGS評価を2回連続で下された場合には、当該ディーラーとのディーラー契約が更新されないなどの可能性がある中で、次の行為を行っていた。

ア 特定ディーラーが各月末までにHD車両を当該月のRSOに従って顧客に販売するために必要な時間的猶予が存在しない状況下において、営業責任者の指示の下、営業担当者からの電話等により、特定ディーラーに対して、当該月のRSOの達成率を上げるように強く要請していた。

イ NGS評価を下した特定ディーラーに対して、翌四半期以降におけるRSOの達成率等の改善計画を作成させるとともに、当該特定ディーラーの代表者等との面談において、その実施を約束させていた。

4 排除措置命令の概要

⑴ ハーレーダビッドソンジャパンは、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。

ア 前記3の行為を取りやめている旨を確認すること。

イ 今後、前記3の行為と同様の行為を行わないこと。

⑵ ハーレーダビッドソンジャパンは、前記⑴に基づいて採った措置を、ディーラーに通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。

⑶ ハーレーダビッドソンジャパンは、今後、前記3の行為と同様の行為を行ってはならない。

⑷ ハーレーダビッドソンジャパンは、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前記⑶で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。

ア ディーラーとの取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の自社の役員及び従業員に対する周知徹底

イ ディーラーとの取引に関する独占禁止法の遵守についての、自社の役員及び従業員に対する定期的な研修並びに第三者による定期的な監査

⑸ア ハーレーダビッドソンジャパンは、前記⑴、⑵及び⑷に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

イ ハーレーダビッドソンジャパンは、前記⑷イに基づいて講じた措置の実施内容を、今後3年間、毎年、公正取引委員会に報告しなければならない。

5 課徴金納付命令の概要

ハーレーダビッドソンジャパンは、令和8年4月20日までに、前記1の「課徴金額」欄記載の額(2億1147万円)を支払わなければならない。

関連ファイル

(印刷用)(令和7年9月18日)ハーレーダビッドソンジャパン株式会社に対する排除措置命令及び課徴金納付命令についてpdfダウンロード(102 KB)

(令和7年9月18日)本件の概要pdfダウンロード(210 KB)

(令和7年9月18日)参考1-2(最近の優越的地位の濫用事件、参照条文)pdfダウンロード(120 KB)

(令和7年9月18日)(別添)排除措置命令書pdfダウンロード(163 KB)


問い合わせ先

公正取引委員会事務総局審査局第二審査
電話 03-3581-3384(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/


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