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令和4年12月14日付 事務総長定例会見記録

令和4年12月14日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

[発言事項]

事務総長会見記録(令和4年12月14日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

転嫁円滑化施策パッケージに基づく法遵守状況の自主点検の結果について

 本日、私から2点申し上げます。1点目は、適正な価格転嫁の実現に向けた取組として、下請法などの法遵守状況の事業者による自主点検結果についてお話しいたします。
 昨年末に取りまとめられた「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」を踏まえまして、公正取引委員会は、今年9月、中小企業庁や事業所管省庁と連名によりまして、事業者団体に対して、下請法違反が多く認められる19業種等について、傘下企業における自主点検の実施を要請したところでございます。
 本日、この自主点検の結果について、中小企業庁とともに「転嫁円滑化施策パッケージに基づく法遵守状況の自主点検結果報告書」として取りまとめました。
 この報告書においては、主に三つの分析結果が記載されております。
 第1に、法遵守に向けた社内管理体制の構築の割合が平均より低い業種では、自主点検の回答割合も平均より低いとの傾向がみられたこと、第2に、価格転嫁状況の認識については、発注者の立場では「おおむね転嫁を受け入れている」との回答割合が高いのに対しまして、受注者の立場では「おおむね転嫁できている」との回答割合は低い結果となったこと、第3に、問題となるおそれのある行為に係る認識について、一部の業種において、従来どおりの取引価格に据え置いた割合が高いとの傾向がみられたことなどの分析結果を記載しております。
 今回の点検結果を受けた今後の取組及び考え方としては、今般の自主点検の結果において例示された業種を始めとして、事業者や事業者団体においては、適正な価格転嫁の実現など取引適正化の重要性の認識共有や取組の周知徹底と併せて、法遵守状況の自主点検を含むコンプライアンス体制の実効性の確保が求められるものと考えております。
 公正取引委員会としましては、適正な価格転嫁の実現など取引適正化に向けて、中小企業庁や事業所管省庁と連携して、今般の自主点検の結果や関連施策の周知徹底を図りつつ、今後取りまとめる緊急調査の結果も踏まえた上で、事業者や事業者団体における自主的取組の改善強化を促してまいります。

電力分野に関する実態調査の開始について

 次に、電力分野に関する実態調査を開始することについてお話しします。
 公正取引委員会は、過去にも、電力市場における競争環境整備について実態調査を行っておりまして、平成24年には、「電力市場における競争の在り方について」と題する報告書により提言を公表し、また、平成30年には経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会(電取委)の研究会で、競争政策上の考え方について、意見表明を行ってまいりました。
 こうした実態調査以降、令和2年10月には、当時の菅総理が、「2050年カーボンニュートラル実現」を表明したことで、電源の非化石化及び再エネ電源主力化の推進が求められることとなり、安定的な供給力の維持及び確保が課題となっております。こうした中、足もとでは、LNG等の燃料価格上昇を背景に、電力卸市場価格の高騰が続き、卸電力市場における「売切れ」も生じた結果、自由化後に電力市場に新規参入した新電力の撤退等が相次いでいる状況です。
 このように電力市場は、安定供給と効率性、あるいは競争促進とのバランスの中で、国内外の様々な情勢を受けて大きく課題が変動する市場です。
 公正取引委員会としましては、デジタル社会や脱炭素化社会において、家庭生活や産業活動の重要な基盤となる電力は、需要家にとって、常に、多様な選択肢が確保され、自己のニーズに合った形で電力を選択できる利益、また、効率化による価格低下といった利益、これらの利益を持続的に享受できることが一層重要になるとの認識の下、これらの利益を実現するためには、競争環境の整備が、引き続き、重要であると考えております。
 そこで、平成24年の実態調査、あるいは平成30年の提言の時とは、市場を取り巻く状況が大幅に変化していることも踏まえ、現在の市場や制度が抱える課題について、競争環境確保の観点から、改めて、実態調査を行うこととしました。
 具体的には、旧一般電気事業者と新電力との間の公平な競争条件の整備・確保がなされているかどうか、脱炭素社会における電力の安定供給確保に向けて、競争政策上の課題がないか、また、資源エネルギー庁及び電取委が新たに実施予定の施策等による競争関係への影響がないか、といった点について調査を行いたいと考えております。
 今後、現在の電力市場の現状や今後の施策等を幅広く把握するため、旧一般電気事業者、一般送配電事業者、新電力、関係省庁等に対してアンケート調査やヒアリングを実施することにより、調査を進めてまいります。対象となった皆様には、この調査の趣旨を御理解いただきまして、是非御協力くださいますようお願いいたします。本件の担当は経済取引局調整課になります。
 私からは以上です。

質疑応答

(問) 価格転嫁の自主点検について、今、政府一体となって、価格転嫁の適正化というのを進めているところだと思いますが、今回の結果を見てみると、例えば道路運送業などの業種でいくつか少し低いような項目があるなど、まだまだ価格転嫁が進んでいない状況もあると思います。そうした進んでいない状況の背景について、どのようにお考えになっているのか、受け止めを教えてください。
(事務総長) 自主点検の結果としては、いくつかの業種で、十分に進んでいない面があるというのが出ております。これは、あくまでも自主点検ということで、事業者団体を通じて、傘下企業に点検していただいた結果でありますので、公正取引委員会本体が行う実態調査とは違う面があろうかと思います。
 この転嫁の動きというのは、昨年末に取りまとめられた転嫁円滑化施策パッケージなどに基づいて行うものでありますけれども、十分に転嫁が進んでいないと見られるような業種におきましては、私どもは、中小企業庁、さらに事業所管省庁と連携して、一層の円滑な転嫁を進めてまいりたいと考えているところでございます。
(問) 電力の関係について、新たな調査というのは、先日発覚した電力カルテルとは関係あるのでしょうか。
(事務総長) こういうタイミングで実態調査を開始するというアナウンスをしましたので、個別の事件との関連を想像される方もいらっしゃると思うんですけれども、それとは全く別でございます。
 冒頭に申しましたように、電力市場は、現在、脱炭素化を含めた、いろいろな課題を抱えているということでございますので、カルテルのような個別企業の行為を見るわけではなく、電力市場という市場の構造や、いろいろな規制や取引慣行などを見て、より競争的で、ユーザーにとって利益があるような市場にしていくための工夫や提言ができないかなということで始めるものでございます。したがいまして、大手電力会社に対するカルテル事件とは、全く独立して行っていくものでございます。
(問) 電力の自由化、競争力の強化というのが必要になっていく中で、先日、カルテルのようなものがあったということについては、競争力を上げていく中で、どのように受け止めていらっしゃるのでしょうか。
(事務総長) 競争力の強化というのは、それぞれが供給する側として、市場を通じて自らの競争力を高めるような努力を行うということだと思いますので、各企業の方で考えられる問題だと思います。私どもとしましては、今回の実態調査について、いろいろな新しい課題に向けた政府の動き、あるいは、カーボンニュートラルへの目標、こういったものを実現する上で、電力市場の構造がどうなっているのかということを見ていくということでございます。その上で、卸売市場が中心になると思いますが、効率的に市場メカニズムが働くような電力市場にしていくかといったような観点から、競争政策上、あるいは独禁法上の問題がないかということを見ていきたいと考えております。
 電力カルテルについては、先週の定例会見でお話ししましたけれども、電力の自由化によって制度が変わって、各地域を超えて競争することが求められている中で、自由化の流れを押しとどめようとするような動きがもしあるとすれば、独禁法上問題ですし、自由化や競争を活用していくという政府全体の電力市場における考え方とも反するものであるということを申し上げました。今回は、そのような個社の行為というよりは、市場の構造を主に見ていくことを考えているものと御理解ください。
(問) 電力分野の実態調査のことで何点かあるんですが、一つは、この実態調査というのは、どれぐらいの期間をかけて結論を得ていくものなのかというスケジュール感、また、対象企業数の規模感について教えてください。
 それから、例えば卸売市場でいえば、旧一般電気事業者と新電力の公平な競争条件の確保という意味でいうと、既に電取委も一応チェックしているという認識でいるのですが、それでも、今、足りない部分というのがどういうところなのか。また、再エネの方の電源の安定化、競争力の確保という部分も、まだイメージがつかないので、この分野の制度的な課題とか問題点があれば、もう少し詳しく教えてください。
(事務総長) まず、実態調査の期間についてですけれども、調査結果の取りまとめ時期は、未定でございます。なるべく早く調査を進めたいとは思っておりますけれども、現時点で、どのタイミングということは分かりかねる状況でございます。一般論で申しますと、実態調査は、1年以上かかるものもあれば、半年ぐらいで結論が出るものもございます。本件が、いつ頃というのは、これからスタートするというところでありますので出口は見えておりません。規模感という御質問ですけれども、目先でアンケート調査等を行おうと思っておりますのは、旧一般電気事業者の発電部門、小売部門、あるいは一部の新電力、一般送配電事業者等でございまして、約130社を念頭にアンケート調査や、一部につきましてはヒアリングなども実施したいと考えているところでございます。
 それから二つ目の御質問ですが、現在の内外無差別と言われるような、卸売市場における不公正な取り扱いについては、現在、電取委の方で、法に基づくものではないんですけれども、内外無差別というのを行っていく方針となっており、旧一般電気事業者の方の発電部門にも、内外無差別を求めているというところかと承知しています。実際、それがどのように行われているのか、どのような効果が出ているのかといったことは、検証の対象としてもいいのかなと思っているところでございます。また、ここで出てきた話ではないですけれども、発販分離といわれている発電と販売を分離している会社と分離していない会社でどう違っているのかといったような市場の構造を見るとか、あるいはそういう制度を取り入れたことによって、個々の企業の対応がどう変わっていくのかということは見ていこうかと思っております。
 最後の再エネについての御質問ですが、今、いろいろな新しい制度の検討が行われていまして、例えば、資源エネルギー庁では、長期脱炭素電源オークションの導入や、デマンドレスポンスの活用促進といったことが検討されていると承知しています。そういったものについて、可能であれば我々としての競争政策からの考え方もお示ししていきたいと思っているところでございます。
(問) 今、電力会社の中には値上げの申請をしていて、原価も出しているところもあるんですけれども、その規制分野の値上げ申請の審査には、この実態調査が何らかの影響を及ぼす可能性はあるんでしょうか。
(事務総長) 今、大手電力会社から規制料金の値上げの申請が行われることは承知しておりますが、申請されている規制料金の値上げについて調査を行うわけではありません。例えば、規制料金の存在そのものが小売分野における競争に及ぼす影響などについて調査するということはあるかもしれませんけれども、現在の値上げをするということに何か物申すということを考えているわけではございません。
(問) 電力の調査の件で、大手電力と新電力の間の競争条件の整備がどうなっているのかを調査をするとおっしゃいましたけれども、現状において、その点についてどういう課題があるのか、お考えがあれば、もう少し詳細に教えてください。また、この調査報告書を踏まえて提言につなげるということでしたが、どこ向けに提言するのかを教えてください。
(事務総長) 大手と新電力の競争条件については、先ほど申しました内外無差別といいますか、イコールフッティングですね。大手電力の小売部門と発電部門、あと、新電力。新電力はあまり自分で発電設備を持っていないところも多いので、販売における競争、あるいは、電力を仕入れる競争である卸電力市場のところでの競争条件がどうなっているかということかと思います。これにつきましては、電取委の方も、内外無差別というのを精力的に進めている承知しているんですけれども、実態としてどうなっているのかという点を見る必要があると思っております。大手の発電部門と小売部門の相対取引、それから大手と新電力との間の相対取引、これはどの程度イコールフッティングが担保されているかといったようなことをアンケートとかヒアリングから実態を把握していきたいということでございます。現状、こういう課題があるからすぐに調べるというよりは、実際どうなっているのかといった実態を調査し、もし調査の過程で何か競争政策上問題があると思えば、改善を提言していきたいと考えています。
 その提言はどこに向けて行うのかということですけれども、これは制度を所管する省庁であったり、あるいは大手電力会社に向けてということもあるかと思いますし、場合によっては、新電力に向けて、こういう点に留意したり、こういう行動を取ることが望ましいといったような提言をする可能性もありますので、現時点では、どこに提言するかを決めたものがあるわけではございません。いずれにしても調査は、これから始めますので、こういうことをやろうというのがありきでなくて、実態をつまびらかにしていきたいと考えています。
(問) 燃料価格の高騰により、新電力会社がもうこの数年ぐらいで経営破綻が相次いでいるんですが、そこについての問題意識というのはあるんでしょうか。
(事務総長) 燃料価格の高騰が現実には起きており、新電力が相次いで撤退しているという実態があるわけでして、撤退によってそこと契約していたユーザーが、急に契約を切られて別のところで電力を調達しなくてはいけなくなるといった点では、ユーザー側にデメリットが生じることがあるという問題はあるかと思っています。そういった面で、新電力の撤退が引き起こすような、ユーザー向けの不利益をどう考えていくのかという面も、必要があれば提言をしていきたいと思います。
(問) 電力の自由化後に新電力の参入が非常に増えてきていると思うんですけれども、参入障壁みたいなところは調べるんでしょうか。もし調べるとしたら、どういった観点で、どういう問題があるのかというのを教えてください。
(事務総長) 参入障壁については、電力市場には、これだけ新電力が入ってきていますので、今現在、直ちに何か障壁あるのではないかということを考えているわけではありません。ただ、今後、新電力の撤退が相次いでいるということで、新電力の参入条件を厳格化していくというような動きも一部検討されてるようですので、そういった参入の厳格化のようなものが生じた場合に、競争に及ぼす影響というのは、一つ考察の対象になるのかなと思います。
(問) 電力の実態調査の内外無差別についてお尋ねしたいんですけれども、大手も新電力と価格面は整えているとは思うので、違いとしてあるのは契約条件のところなのかなと思うんですけども、例えば不公正な取引としてどんな契約条件があるとか、そういう想定があれば教えてください。
(事務総長) 今、こういう問題があるという想定で行っているわけではありませんので、今の御質問のような想定はなく、あくまで実態を調べていくということで考えております。
(問) この電力の調査について、何月からどこの団体に対してと表現したらいいでしょうか。
(事務総長) これから行いますので、12月からということだと思います。また、団体というわけではなく、実際に事業者に向けて、直接アンケート調査などを発送する予定です。

以上

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