シンガポール

シンガポール競争委員会は,アルミ電解コンデンサについて国際カルテルを行っていたとして,エルナー,ニチコン,ルビコン,ケミコンの各現地子会社に対し総額1955万シンガポールドルの制裁金を賦課。パナソニック子会社はリニエンシー申請により制裁金免除

【概要】

 シンガポール競争委員会(以下「CCS」という。)は,2018年1月5日,反競争的協定を結んでいたコンデンサ製造業者5社(以下「関係人」という。)に対する違反決定を公表した。当該協定には,シンガポールの顧客向けのアルミ電解コンデンサに関する価格カルテル並びに販売,流通及び価格に係る機密情報の交換が含まれ,競争法第34条に違反するものである。

 関係人は以下のとおり。:
 a ELNA Electronics (S) Pte. Ltd.(以下「エルナー」という。)
 b Nichicon (Singapore) Pte. Ltd.(以下「ニチコン」という。)
 c Panasonic Industrial Devices Singapore及び Panasonic Industrial Devices Malaysia Sdn. Bhd.(以下,2社を併せて「パナソニック」という。)
 d Rubycon Singapore Pte. Ltd.(以下「ルビコン」という。)
 e Singapore Chemi-con (Pte.) Ltd.(以下「ケミコン」という。)

 アルミ電解コンデンサは,コンピューターや様々な家電製品などの電気機器に使用される電子部品である。関係人は,OEM(相手先ブランド製造)業者やEMS(電子機器受託製造サービス)業者,他のエンドユーザーにコンデンサを再販売する販売業者,シンガポールに拠点を置き,シンガポール国内外の顧客又は関連会社にコンデンサを調達・供給している海外調達業者といった顧客にアルミ電解コンデンサを販売していた。

CCSの調査

 調査は,CCSがリニエンシープログラムに基づくパナソニックからのリニエンシー申請を受けた後に開始された。

 CCSの調査によると,競合関係にあった関係人は,シンガポールで定期的に会合を開き,(1)顧客の見積り,販売数量,生産能力,事業計画,価格戦略といったビジネス上の機密情報を交換し,(2)価格の様々な引上げを含め,販売価格について協議及び合意し,(3)顧客からのアルミ電解コンデンサの値下げ要求を共同で拒否することに合意した。

 カルテル行為は1997年から始まり,関係人の上層部の従業員がシンガポールでの定期的な会議(2013年までほぼ毎月)に出席していた。長期的なカルテルによって,関係人の収益性と市場シェアに関する競争が回避され,顧客は不利益を被った。当該協定がなければ,関係人はより大きな競争圧力を受けていた。つまり,顧客は別のアルミ電解コンデンサの供給業者に切り替えることができるため,各供給業者は,競合他社に市場シェアを奪われることなしには価格の引上げができなかった可能性がある。したがって,カルテル行為がなければ,顧客はより良い条件の価格又は品質の製品を手にすることができるはずだったのである。

 本件はシンガポールを含むASEANのアルミ電解コンデンサの主要な供給業者で構成された長期的なカルテルであったため,競争への侵害は長期間にわたるものであった。したがって,関係人の行為は重大な競争法違反である。

国際協力と海外調査

 米国司法省,中国国家発展改革委員会,日本の公正取引委員会,韓国公正取引委員会,台湾公平交易委員会及び欧州委員会において,アルミ電解コンデンサを含むカルテル行為に関して同様の調査が行われた(幾つかは現在も調査中である。)。

 CCSは,調査期間中,各国の競争当局と情報交換を行い,協力した。CCSとこれらの当局は,特に,関係人からの証拠収集の状況やCCSの調査の進捗状況を共有し,調査に関連する様々な手続上の問題について議論した。

制裁金

 CCSは,関係人に対し,下記の制裁金を支払うよう命じた。:

関係人

制裁金

エルナー

$853,227.00

ニチコン

$6,987,262.00

パナソニック

0

ルビコン

$4,718,170.00

ケミコン

$6,993,805.00

合計

$19,552,464.00

 シンガポールのアルミ電解コンデンサ販売市場における関係人のシェアは3分の2以上を占めていた上,カルテル行為が長期間継続していたことから,CCSは過去最高額の制裁金を課した。制裁金が全額免除されたパナソニックのほかに,CCSのリニエンシープログラムに基づき,エルナー,ルビコン及びケミコンも制裁金が減額された。

 CCSのToh Han Li事務局長は次のように述べている。:
「供給業者間のカルテルは,市場における競争に重大な損害をもたらし,企業や最終消費者の交渉力を弱め,価格競争のメリットを失わせるものである。本件は,CCSにおける3件目の世界的国際カルテル事案である。シンガポールの市場は世界に向けてオープンであるだけに,こうした国境を越えたカルテルの影響を受けやすい。カルテルがシンガポール市場とその競争力に悪影響を与えないよう,CCSは引き続き強力な執行措置を講じていく。」

南アフリカ

南アフリカ競争裁判所は,南アフリカ競争委員会が禁止した,日本郵船,商船三井及び川崎汽船による定期コンテナ船輸送事業の共同企業体設立を条件付きで承認

2018年1月17日 南アフリカ競争裁判所 公表
原文

【概要】

 南アフリカ競争裁判所は,日本郵船,商船三井及び川崎汽船(以下「当事会社3社」という。)による定期コンテナ船輸送事業に関する共同企業体の設立を条件付きで承認した。共同企業体Ocean Network Express(以下「ONE」という。)の株式は,当事会社3社で分け合うことになる。
 当事会社3社は,主として海運事業を営んでおり,定期コンテナ船輸送,自動車船輸送及びバラ積み船輸送といった様々な形態の海運サービスを行っているほか,ターミナルサービス,ロジスティックサービス及びクルーズ業務も行っている。また,現在,南アフリカでは,日本郵船がMichael Cotts Maritimeを,商船三井が子会社である商船三井南アフリカを,川崎汽船が子会社である川崎汽船南アフリカを通じて海運事業を行っているが,今後,ONEは,当事会社3社及びこれらの現地子会社又は関連会社(以下「現地子会社等」という。)の行っている定期コンテナ船輸送事業を一手に取り扱うことになる。
 なお,企業結合後も,当事会社3社は,自動車船輸送及びバラ積み船輸送サービスの提供に関する市場においては引き続き競争していくことになる。

背景

 当初,南アフリカ競争委員会は,自動車船輸送,定期船輸送及びバラ積み船輸送に関する市場の協調が強まる可能性があるとして,当該企業結合を禁止していた。しかしながら,競争委員会は,裁判所の手続においては,競争上の懸念を解消するための広範囲にわたる条件を当事会社3社と共同で提示し,最終的には当該企業結合が条件付きで承認されることに反対しなかった。当事会社3社は条件の必要性について異議を唱えたが,承認を得るために当該条件に合意した。

条件

 裁判所が承認した条件によって,自動車船輸送及びバラ積み船輸送事業における,当事者間の競争上の機密情報の交換及び役員兼任に関する懸念は解消される。
 当該条件は,定期コンテナ船輸送事業の共同企業体ONEと隣接事業の間で従業員及び幹部の相互交流(cross pollination)を禁じるものであり,具体的には以下のとおりである。
 ①ONEと現地子会社等の幹部及び従業員(当事会社3社からの出向者,離職者及びONEと現地子会社等に就職予定の者も含む。)は,自動車船輸送及びバラ積み船輸送事業に関する機密情報を他社から得てはならない。
 ②ONE及び現地子会社等の取締役及び非常勤取締役は,自動車船輸送及びバラ積み船輸送会社の日常業務に関与してはならない。
 ③ONEの持株会社の取締役は当事会社3社の取締役及び役員又はそのどちらかを兼務する予定であるところ,これら取締役は自動車船輸送及びバラ積み船輸送事業に関するONE及び現地子会社等のいかなる機密情報も開示又は交換してはならない。

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