南アフリカ
南アフリカ競争委員会は,川崎汽船がカルテル行為を行ったことを認め,9900万ランドの制裁金を支払うことに合意したことを公表
2018年8月21日 南アフリカ競争委員会 公表
原文
【概要】
南アフリカ競争委員会(以下「委員会」という。)は,自動車海上輸送企業である川崎汽船株式会社(以下「川崎汽船」という。)と締結した同意和解協定を,裁判所の命令として承認するよう,競争審判所に付託した。
当該協定により,川崎汽船は,9892万8170ランド5セントの行政制裁金を支払うこととなっている。
本件調査は2012年9月11日に開始されたが,委員会の調査によって,川崎汽船,株式会社商船三井(以下「商船三井」という。),日本郵船株式会社(以下「日本郵船」という。)及びワレニウス・ウィルヘルムセン・ロジスティクス・エーエス(以下「WWL」という。)が,南アフリカからヨーロッパ,西アフリカ,東アフリカ及び紅海を経由して,ヨーロッパ,北アフリカ,(地中海)及びカリブ海諸島へのトヨタ車の海上輸送について価格を固定し,市場分割を行い,さらに,受注調整を行ったことが判明した。
これら関係人は,南アフリカ発着の自動車輸送,大型設備又は機械類の海上輸送サービスを提供している。
委員会が本件を競争審判所に付託するに当たって,Tembinkosi Bonakele委員長は,「南アフリカはアフリカ南部地域内外において,商取引上の戦略的拠点となっている。」と述べた。
したがって,海上輸送業者によるカルテル活動は,アフリカ南部地域における貨物輸送の価格高騰を引き起こした。委員長は,「カルテル及び共謀行為によって,取引コストが上昇し,世界市場においてこの地域が競争的でなくなり,この地域における経済成長は大きく後退した。」とも付言した。
委員会は,川崎汽船に対し,競争法上の15件の違反行為を起訴したが,川崎汽船は8件について認めている。
背景
2012年9月11日,委員会は,自動車海上輸送業者が,競争法に反して,南アフリカ発着の自動車海上輸送,大型設備及び機械類の海上輸送サービス市場において市場分割及び価格を拘束を行っているとして調査を開始した。
委員会は自動車,機械類又は設備(新車及び中古車,ローラー車の新車及び中古車並びに農業機械の新車中古車を含む。)の海上輸送サービスに係る入札に関して調査を実施した。この入札は,複数の事業者に対し,オートアライアンスタイランド(マツダ),BMW,ダイムラー,ダイハツ,フォードモーター,ホンダ,マルチ・スズキ,三菱自動車,日産自動車,日産(ルノー・日産アライアンス共同購買組織),スズキ,トヨタモーターアジアパシフィック,トヨタ自動車,豊田通商,南アフリカトヨタ自動車によって実施された。
委員会の調査によって,遅くとも2002年から2013年までの間,川崎汽船,商船三井,日本郵船及びWWLは南アフリカから海外にトヨタ車を海上輸送するための南アフリカトヨタ自動車が実施した入札で共謀していたことが明らかとなった。また,委員会は,川崎汽船,商船三井,日本郵船及びWWLが,取り決められた間隔又は頻度で,南アフリカから欧州までの航路を運行する船舶数に関して合意していたことも把握した。さらに,委員会は川崎汽船,商船三井,日本郵船及びWWLはトヨタ車の船積みのための料金を南アフリカトヨタ自動車に請求するための運賃タリフの料率に合意していたことも把握した。
2015年,日本郵船とWWLはこの入札における共謀を認め,委員会と和解した。日本郵船も,行政制裁金1億397万7927ランドを支払い,また,ノルウェー企業のWWLも,行政制裁金9569万5529ランドを支払っている。
なお,商船三井は,最初に委員会に接触し,また協力的であったことから,制裁金は課されなかった。
韓国
韓国公正取引委員会はコンデンサに係る国際カルテルを行った9社に対し制裁を課したことを公表
2018年9月17日 韓国公正取引委員会 公表
原文
【概要】
韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)は,2000年7月頃から2014年1月までの間,日本に本社を置くコンデンサの製造・販売会社9社が韓国をはじめとする多くの国に供給するアルミコンデンサとタンタルコンデンサの供給価格を共同で引上げ・維持することについて合意した行為を摘発し,9社に対し,是正命令と課徴金計360億9500万ウォンを課し,そのうち4法人と所属従業員1人を検察に告発することを議決した。
<表>事業者別課徴金賦課内訳
区分 |
事業者名 |
請求課徴金 |
アルミコンデンサ
|
ルビコン株式会社 |
4,691 |
日本ケミコン株式会社 |
4,211 |
|
三洋電機株式会社 |
2,602 |
|
日立化成エレクトロニクス株式会社 |
570 |
|
ニチコン株式会社 |
446 |
|
エルナー株式会社 |
166 |
|
タンタルコンデンサ
|
株式会社トーキン |
13,051 |
三洋電機株式会社 |
5,060 |
|
松尾電機株式会社 |
1,840 |
|
ニチコン株式会社 |
1,679 |
|
日立化成エレクトロニクス株式会社 |
1,442 |
|
エルナー株式会社 |
300 |
|
ビシェイポリテック株式会社 |
37 |
|
総計 |
|
36,095 |
※課徴金額は関連売上高の確定等により変化する場合がある。
コンデンサ業界は規模の経済が作用するため,企業は,需要先からの恒常的な値下げ圧力に直面していたところ,可能な限り有利な交渉を引き出すために,価格交渉力を維持する必要があった。
また,製品の同質性のため,原材料価格の上昇や為替引下げ(円高)等,全製品の価格に影響を与える変動要因が発生した場合には,個々の企業間交渉の内容が異なる場合,値下げを要求する需要先を説得するのは困難であった。
このため,日本国内のアルミコンデンサ製造・販売会社6社とタンタルコンデンサ製造・販売会社7社は,原材料値上げ,為替レートの引下げのたびに,カルテルに係る協議において,業界の統一的な対応が必要となるとして,海外における価格引上げ・維持など,業界全体の対応策を議論した。
これら業者は,社長会の集まり等を通じて,海外価格の競争を回避しようという基本的な対応策を議論して,また,ECC会,TC会,ATC会,MK会,CUP会等の,時期ごとに構成・運営された管理職の集まりにおいて,具体的な戦略を合意・実行した。
※ 「価格競争ではなく、共存共栄で行こう。」(2004年11月11日社長会),「海外市場で更に積極的に値上げをする。」(2000年7月28日ECC貿易部会)等の発言に関する議事録がある。
また,需要者が同じ場合には,個々の競合他社間での価格情報の交換により,最低価格を維持することとした。
日本のコンデンサメーカーは,1990年代から,競合他社間における協議のため,役員クラスの集まりである社長会と,管理職級の集まりであるECC会,TC会を運営してきた。
2003年5月からは,アルミコンデンサメーカー間の集まりであるECC会と,タンタルコンデンサメーカー間の集まりであるTC会を統合して,ATC会を結成し,運営した。
2005年3月からは,ATC会は,MK会(マーケティング研究会)に名称を変更して,2014年1月までこれを維持しつつ,価格の議論を続けた。
これとは別に,アルミコンデンサメーカー間の非公式の集まりであるCUP会(Cost UP)を結成し,2009年5月まで運営した。
※ ニチコンが2005年3月にATC会を脱退して,ATC会をMK会に変更したが、その後,ニチコンは,カルテル脱退により売上高が減少すると,2006年12月から非公式の集まりであるCUP会にまた参加した。
日本のアルミコンデンサ6社とタンタルコンデンサメーカー7社は,このように構成・運営された重層的なカルテルの協議を通じて,2000年7月頃から,互いに価格競争を自制することにより,シェアを維持するという基本原則について,黙示の合意を形成した。
このように形成された基本的な合意の下,為替レートの下落(円高)や原材料価格の上昇等,価格引上げのきっかけとなる出来事が発生した場合,「社長会」等における協議を通じて,共同の価格引上げのための実行計画及び戦略を議論した。
需要先が同じ場合には,カルテルに係る協議を通じて結んだ親交に基づいて,個別に連絡し,需要先に提示する見積価格を調整することにより,供給価格水準を維持した。
コンデンサメーカーは,2000年7月から,カルテルに係る協議を行うMK会が解体された2014年1月25日まで,継続的に集まって,生産量・販売量・価格の引上げ計画・引上げ率等の機密情報を交換し,相互に調整する方法で実行した。
また,共通の需要先の現行価格,見積価格等の価格情報を個別に交換する方法により,合意を遂行した。
特に,生産量・売上高等の情報は,互いの合意の遵守を実施する監視手段として活用していたところ,生産量,売上高等が増加したコンデンサメーカーに対して,他のコンデンサメーカーは値下げを疑って,これに抗議するなどして,互いに監視した。
また,これら業者は,自ら行動の違法性を認識しつつ,秘密裏に連絡し合い,注意喚起をした。
例えば,社内の従業員らに「社長会」等における協議の内容を報告するため,「読後削除のこと」,「メールが外部に流出しないように特に留意すること」等のメッセージを記載した上で当該協議に係る議事録が含まれたメールを送っていた。
このような共同行為により,公正取引法に違反した期間において,韓国に輸出されたコンデンサの価格が引き上げられたり,価格引下げが阻止されたりして,競争を制限する効果が発生した。
サムスン・LG等の韓国の大型需要先をはじめとして,中小需要先に供給しているコンデンサ価格の引下げが阻止されたり,価格が引き上げられたりすることにより,需要先が生産する製品の価格や品質競争力に悪影響を及ぼした。
カルテルが行われた期間(2000年7月〜2014年1月)に韓国に輸出された約7366億ウォン(アルミコンデンサ2438億ウォン,タンタルコンデンサ4928億ウォン)のコンデンサ供給価格に影響を与えた。
KFTCは,日本国籍の製造・販売会社9社に,是正命令とともに,計360億9500万ウォンの課徴金を課した。
この事件は,KFTCの調査の段階から外国の競争当局と協力して,米国,EU,日本,台湾,シンガポール等で我が国と同じような時期に行われたカルテルに対し,措置を採った。
このうちKFTCは,4法人(ビシェイポリテック㈱,松尾電機㈱,エルナー㈱,日本ケミコン㈱)と,個人1名(日本ケミコン㈱従業員)を検察に告発する予定である。
本件共同行為に参加したコンデンサメーカー9社の韓国国内シェアは,アルミコンデンサは,約60〜70%,タンタルコンデンサは,約40〜50%である。
日系企業が生産する高品質のコンデンサ間には品質差が無く,特定のコンデンサ別に2〜4社が市場を分けて占有している。
コンデンサの価格は数十ウォン〜数百ウォンで,価格のばらつきが大きく,製品の種類は仕様ごとに非常に多様である。したがって,実際の取引価格は,需要先との交渉力,製品仕様等様々な要因の影響を受けるので,合意があっても,外形上の一致が現れ難い。
サムスン・LG等の大型需要先は,コンデンサメーカーが直接,価格を交渉して販売し,中小需要先は,国内流通子会社や代理店が,本社が提示した価格方針を基準に価格を交渉して販売している。
今後,素材・部品など中間財の輸入市場において韓国経済に大きな影響を与える外国事業者のカルテル行為を国内事業者と同様に細かく監視し,違反が認められれば厳重に制裁する。