その他

カナダ

カナダ改正競争法が成立

2022年6月24日 カナダ競争局 公表

原文

【概要】

 2022年6月23日、カナダの消費者、事業者及び労働者を反競争的行為から保護するため、カナダ競争局(以下「競争局」という。)の機能強化等を内容とする重要な競争法の改正案が成立した。
法改正を受け、今後、競争局は一般向けに公開説明会を開催し、企業向けには最新ガイダンスを発表することとしている。
 
 主な改正点は以下のとおりである。
・法律に違反した者に対する罰金及び罰則の上限を引き上げる。
・雇用者間の賃金協定及び引き抜き禁止(no-poach)協定の締結を禁止する。
・不完全な価格表示が欺瞞的顧客誘引行為であることを明確にする。
・市場支配力の濫用によって影響を受けた者が競争審判所に私訴を提起できるようにする。
・今日のデジタル経済において、競争局によるより効果的な執行を可能にする。

 本改正は直ちに施行されるが、可能な罰金を引き上げ、雇用者間の賃金協定及び引き抜き禁止協定の禁止を定めている共謀罪についての規定の改正は例外である。これらの改正は、来年(2023年)6月23日に施行される。法改正により、事業者は法律を遵守していることを確認するための猶予を与えられる。
 本改正内容及びその影響の詳細については、競争局が作成している「2022年競争法改正に関するガイド」(https://www.competitionbureau.gc.ca/eic/site/cb-bc.nsf/eng/04671.html)を参照のこと。
 競争局は、数週間以内に、競争法の新条項について関係者にさらに周知するため、公開オンライン説明会を開催する予定である。説明会の日程については、近日中に発表する。
 また、競争局は、最もオープンで効果的な方法で改正を実施するために、利害関係者との協力を行う。当該協力には、経済界及び法曹界に対する透明性及び予測可能性を確保するために、競争局の執行ガイダンスを改定することが含まれる。

中国

中国独占禁止法の改正について

2022年6月24日 全国人民代表大会常務委員会 公表(*1)

原文
【概要】

 6月24日、中国の全国人民代表大会(以下「全人代」という。)常務委員会において、中国独占禁止法の改正法案が可決され、令和4年8月1日に施行されることが決定した。
主な改正内容は以下のとおり。
1 制裁の強化についての改正 
 制裁金について、以下のとおり新設又は上限額の増額を行っている。
(1)独占的協定(水平・垂直の共同行為)の制裁強化(第56条)
   違反行為者に対する制裁金の基本(前年度売上額の1%以上10%以下)は変わらないが、以下の点について強化。
  ア 前年度売上額がない場合に「500万元以下」の制裁金を課す規定を新設。
  イ 独占的協定を締結したが未実施である場合の制裁金上限額を50万元から300万元に増額。
  ウ 個人に対する制裁金(100万元以下)を新設。
  エ 独占的協定を組織・幇助した者に対する制裁金を新設(違反行為者と同じ算定方法。後記4参照。)
  オ 事業者団体に対する制裁金上限額を50万元から300万元に増額。
(2)事業者集中(企業結合)の届出義務違反等違法実施に対する制裁強化(第58条)
 事業者集中の届出義務違反等に対する制裁金を、「50万元以下」から、以下のとおり改正。
  ア 違法に実施された事業者集中が競争制限効果を有する又はそのおそれがある場合:前年度売上額の10%以下。
  イ 競争制限効果を有しない場合:500万元以下。
(3)調査妨害に対する制裁強化(第62条)
 調査妨害に対する制裁金について、以下のとおり増額。
  ア 個人の場合:上限を10万元から50万元へ増額。
  イ 組織の場合:上限を100万元から「前年度売上額の1%以下(売上額がない又は算定困難な場合は500万元以下)」へ実質的に増額。
(4)制裁金を上限額の2倍以上5倍以下に増額することができる規定の新設(第63条)
 独占的協定(第56条)、市場支配的地位濫用(第57条)、事業者集中の届出義務違反等(第58条)及び調査妨害(第62条)に対する制裁金について、「情状が特に重く、影響が特に劣悪であり、特に重い効果をもたらしている場合」には、それ ぞれの規定の制裁金額の2倍以上5倍以下の範囲で具体的な制裁金額を定めることができる。
 
2 事業者集中(企業結合)審査制度についての改正
(1)審査期間中断の制度を導入(第32条第1項)
 以下の場合に、事業者集中の審査期間の計算を中断できる制度を新設。
  ア 事業者が規定に従った文書や資料の提出をしていないために、審査業務を進めることができない場合。
  イ 事業者集中に対して重大な影響を有する新しい状況や新しい事実が出現し、確認を行わなければ審査業務を進めることができない場合。
  ウ 事業者集中に対して付加する制限的条件(注:問題解消措置)について更なる評価が必要であり、かつ、事業者が中断請求を提出した場合。
(2)届出基準に達しない事業者集中に対して届出を求める制度(第26条第2項)
 届出基準には達していないが、当該事業者集中が競争を排除、制限する効果を有する又はそのおそれがあることを証明する証拠がある場合、当局は事業者に届出を求めることができる旨の規定を新設。
(3)分類・クラス分け審査制度の整備(第37条)
 当局は事業者集中の分類・クラス分け審査制度を整備し、国家経済・国民生活等の重要分野の事業者集中審査を強化する旨を規定。
 
3 垂直的独占協定についての新しいルールの導入
(1)垂直的独占協定について、関連市場における市場シェアが当局の定める基準よりも低いことを証明することができる場合に、禁止されない旨の規定を新設。セーフハーバーの根拠規定を設けたものといわれる。
(2)再販売価格維持について、競争制限効果がない場合には禁止されない旨を規定(第18条第2項)
  再販売価格維持について、「事業者が、当該協定(再販)が競争を排除、制限する効果を有しないことを証明することができる場合は、禁止しない」と規定。
  再販売価格維持については、改正前は効果要件が規定されておらず、原則違法と解する考え方もあったため、今回の法改正により原則違法ではない点が明確となった。
 
4 独占的協定の幇助等を禁止する規定の新設(第19条)
 他の事業者が独占的協定を締結することを組織すること、幇助することを禁止する旨の規定を新設。制裁金は違反行為者と同様(前記1(1)エ)。
 
5 その他
(1)独占禁止法業務が共産党の指導・統率によること、及び競争政策の基礎的地位を強化することを明示(第4条)
(2)公平競争審査制度の確立と実施についての規定を新設(第5条)
(3)デジタル分野における濫用行為へ対処する旨の規定を新設(第9条及び第22条第2項)
(4)行政権力濫用による競争の排除、制限行為の例を増設(第40条) 
*1 全人代の公表文は法律の「改め文」の形でのみ掲載されているが、本稿は、公正取引委員会が現行法と照らし合わせて主要な改正部分を取りまとめたものである。

英国

英国競争・市場庁、モバイルブラウザ及びクラウドゲーム分野の市場調査について公表

2022年6月10日 英国競争・市場庁 公表

原文

【概要】

 英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)は、アップル及びグーグルのモバイルブラウザ(訳注:モバイル端末向けに設計されたウェブブラウザ)における市場支配力及びアップルのApp Store(訳注:アプリストア)を通じたクラウドゲームサービス(訳注:コンピュータゲームをストリーミング配信するサービス)に対する制限行為を対象とした市場調査(market investigation)を立ち上げることについての意見募集を開始した(2022年7月22日期限)。また、これと並行して、CMAは、グーグルのアプリストア(訳注:Play Store)における決済システムについて、1998年競争法に基づく調査を開始した。
 
 また、CMAは、アップル及びグーグルのモバイルエコシステムについて、1年にわたる市場研究(market study)を経て、本日、最終報告書を公表した。同市場研究を通じて、アップル及びグーグルは、モバイル端末のOS、アプリストア及びウェブブラウザを含むモバイルエコシステムにおいて、事実上の複占状態(duopoly)にあり、これらの市場に対して支配力を行使できることが判明した。
 CMAが介入しなければ、両社はこの市場での支配力を維持、あるいは強化することにより、競争やイノベーションに係るインセンティブを制限する可能性が高い。
 
 CMAが公表した最終報告書では、これらのエコシステム全体にわたって様々な介入の可能性があることが確認されているが、CMAは、既存の権限を行使して、これらの問題に直ちに取り組むために的を絞った行動を取ることができるか検討した。その結果、CMAは、モバイルブラウザ及びモバイル端末でのクラウドゲームへのアクセスを対象とした市場調査を開始するかについての意見募集を実施することとした。
 
モバイルブラウザを対象とした市場調査
 ブラウザは、ブラウザのパフォーマンスの基本となっている「エンジン」によって駆動している。英国における2021年のモバイルウェブブラウジング(訳注:閲覧)の97%は、アップルかグーグルのブラウザエンジンを搭載したブラウザで行われた。アップルは、自社のモバイル端末において、自社のブラウザエンジン以外の選択肢を禁止する独自の制限を設けている。CMAは、こうした仕組みにより、競合ブラウザ(rival browsers)がSafari(訳注:アップルのブラウザ)とスピードや機能性等の面で差別化する可能性を著しく制限するとともに、アップルが自らのブラウザエンジンに投資するインセンティブを制限していることを懸念している。
 また、こうした制限は、ウェブアプリ(個別にダウンロードするのではなく、ブラウザ上で動作するアプリ)の機能を著しく阻害し、消費者及び企業は、革新的な技術による恩恵を十分に受けることができなくなっている。また、モバイル端末には通常、グーグル Chrome又はSafariがプレインストールされ、購入時にデフォルトとして設定されているため、他の競合ブラウザに対して大きな優位性を持っている。アップル及びグーグルは、モバイルウェブブラウジングにおいて強力な地位を築いており、両社のブラウザの供給シェアは合計で約90%に達している。
 
クラウドゲームを対象とした市場調査
 アップルは、App Storeにクラウドゲームサービスが参入することを阻害した。ウェブアプリと同様、クラウドゲームサービスは、個別にダウンロードするのではなく、ストリーミング可能な高品質のゲームへのモバイルアクセスを提供する、発展中のイノベーションである。ゲームアプリ(Gaming apps)はアップルにとって重要な収入源であり、クラウドゲームサービスはアプリ配信におけるアップルの強力な地位を脅かす存在になりかねない。この分野の成長を妨げることで、アップルのモバイルユーザーがクラウドゲームサービスの恩恵を十分に受けられなくなるおそれがある。CMAは、市場研究の中で、多くの英国企業やスタートアップ企業から、モバイルブラウザやクラウドゲームに関する制約によって、これらの市場でのイノベーションや競争が困難になっているという懸念の声を聞いた。
 CMAによって提案されている市場調査では、モバイルブラウザ及びクラウドゲーム分野で確認された競争上の懸念について更に評価し、適切な措置があるとすればどのようなものになるかについて決定することになる。これには、アップル及びグーグルの慣行を変更するよう求める、法的拘束力のある命令が含まれる可能性がある。
 
1998年競争法に基づく調査
 CMAは、グーグルのアプリストアにおけるアプリの掲載に関する規約、特に、ユーザーがある特定のデジタル製品(digital products)についてアプリ内決済を行う際に、グーグルが設定する条件について、1998年競争法に基づく調査を開始している。CMAは、これとは別に、アップルのApp Storeの規約についても、2021年3月以降、1998年競争法に基づく調査を実施している。

フランス

フランス競争委員会、メタがフランスの非検索連動型オンライン広告市場において支配的地位を濫用していた疑いで審査していた件について、メタからの問題解消措置を受け入れ、審査を終了

2022年6月16日 フランス競争委員会 公表

原文
【概要】

 メタは、フランスの非検索連動型オンライン広告市場において競争上の懸念を生じさせる可能性のある行為を終了させるため、フランス競争委員会(以下「競争委員会」という。)と確約を締結した。
 
背景
 競争委員会の審査部門は、2019年9月、フランスのオンライン広告事業者であるCriteoによる申告を受けて、競争条件に影響を与える可能性のある多くの行為の中でも、広告仲介サービス事業者間及びCriteoとメタの間の競争について、競争上の懸念を提起した。
 メタのグループ会社であるMeta Platforms Inc., Meta Platforms Ireland Ltd.及び Facebook Franceは、本件の手続において2021年6月に確約案を提案し、その後、競争委員会は、当該確約案について市場調査を実施し評価を行った。
 当該確約案の精査・改善後、競争委員会は確約案を受け入れ、当該確約を拘束力のあるものとして、審査を終了した。これは、競争当局が競争法の手続においてメタの確約を受け入れた初めての案件である。
 
Criteoの申告
 Criteoは、広告主に広告仲介サービスを提供しており、特に、独自のリターゲティング技術(訳注:リターゲティングとは、広告主が顧客又は潜在的顧客と認識している特定の個人に、身元確認を行った上で、ターゲットを絞った広告を配信することを目的としており、ユーザーの属性や行動履歴に基づき、最適なコンテンツを提供するパーソナライズド広告の一形態である。)を利用して、フェイスブックやインスタグラムなどのプラットフォームを含む様々な広告在庫(訳注:広告を掲載するスペース)への広告掲載を最適化する事業を行っている。
 メタは、インターネットユーザー、広告主及びその関係者向けに、様々な製品及びサービスを提供している。メタは、その収益のほとんどを広告主に対する独自の広告在庫の販売から得ており、また、若干ではあるが、パブリッシャー向けの広告ネットワーク(Ad Network)であるMeta Audience Network(MAN)サービス(旧Facebook Audience)を利用したサードパーティパブリッシャー在庫の販売から収益を得ている。
 メタは、広告主に対して、自社のフェイスブック、インスタグラム、メッセンジャーといった広告在庫及びMANサービスを利用するパブリッシャーの広告在庫、入札システム、キャンペーン管理・購入プラットフォーム、キャンペーンのターゲティング及びパフォーマンス測定のためのデータマイニング機能(訳注:大量のデータから有意義なデータを抽出する機能)などを提供している。
 2016年以降、メタは特定のアプリケーション・プログラミング・インターフェイス(以下「API」という。)を、Criteoを含む特定の広告仲介サービス事業者が利用できるようにした。Criteoは、APIを使用して、入札及びキャンペーンパフォーマンスの追跡を改善した。しかしながら、メタは、2018年、Criteoを含む特定の広告仲介サービス事業者に対し、APIの提供を取りやめた。
 Criteoは、同時に、フェイスブックのマーケティングパートナー(現在のメタビジネスパートナー)から外された。フェイスブックのマーケティングパートナーになると、その受益者である利害関係者は、(特に、メタが提供する技術や問題解決策の進化に対応するための技術サポート及び研修の提供が受けられるおかげで)自社のサービスの品質を向上させることが可能となり、APIをより容易に利用できるようになり、フェイスブックのマーケティングパートナーの地位にあれば、広告主から、フェイスブック広告キャンペーン管理に関する技術的専門知識及びノウハウに関する品質が保証されていると認識される限りにおいて顧客からの評価が向上する。
 Criteoは、その後、メタが支配的地位を濫用し、メタの行為により自社の技術を十分に活用して事業を行うことができないと考え、本件について競争委員会に申告した。
 
競争上の懸念
 競争委員会の事件担当班は、予備的な評価において、2018年に49%、2019年に50%の市場シェアを持つメタが支配的地位を占めると考えられるフランスの非検索連動型オンライン広告市場において、メタの行為の一部が、競争上の懸念をもたらすおそれがあることを確認した。
 第一に、Criteoが2018年7月に、メタの旧パートナーシッププログラム(以下「Facebook Marketing Partnerプログラム」という。)へのアクセス権を奪われた状況は、Facebook Marketing Partnerプログラムへのアクセス基準における客観性、透明性、予測可能性、安定性の欠如、さらにアクセス基準の差別的な取扱いに該当すると考えられる。
 第二に、メタの営業部門は、2017年後半からCriteoに対する誹謗中傷に該当し得る行為を行っていた。これらの行為は、CriteoがFacebook Marketing Partnerプログラムに再アクセスできない一因となった。
 第三に、メタは、2018年に、限られた事業者に試験的に提供していた「User Level Bidding」と呼ばれるAPI(以下「ULB API」という。)へのCriteoのアクセスを除外した。
 Criteoは、ULB APIにより、自社の入札技術や商品推薦技術を利用して、Metaの広告エコシステム内でリターゲティングの提供を最適化できるようになった。このアクセス権喪失の条件により、競争委員会は、メタのAPIにアクセスする基準の透明性、客観性及び非差別性について懸念を持った。
 競争委員会は、予備的な評価で確認された行為は、一方では、メタの広告在庫に掲載しようとするオンライン広告サービスプロバイダー間の競争を歪め、他方では、メタの垂直統合が強化されている状況において、Criteoのような広告仲介サービス事業者によってもたらされる競争圧力を弱めることによって、メタが開発するリターゲティングサービスの競合他社のアクセスを拒否する効果があるだろうと判断した。
 
メタの確約
 メタは、これらの競争上の懸念を解消するための確約を提示した。競争委員会は、予備的な評価で指摘された競争上の懸念を解消する可能性があるとして、当該確約を受け入れた。
 
1 パートナーシッププログラムへのアクセス条件
 まず、メタは、広告技術サービス(Advertising Technology、以下「アドテク」という。)の分野で事業活動を展開する事業者に対し、メタビジネスパートナーシッププログラムへのアクセスを提供することを確約する。アクセスの内容は、もっぱら、広告キャンペーンにおける広告API、一連の広告、又はアドテクサービスプロバイダーに帰属する広告の定量的水準次第である。さらに、メタは、過去にULB APIを利用することができたサービスプロバイダーを自動的に再アクセスさせることを確約している。
 
2 営業部門の教育
 次に、メタは、営業部門に対して、特に広告クライアントに対するコミュニケーションの内容に関するコンプライアンス研修を実施することを確約する。メタの従業員は、当該研修を毎年、受講することが義務付けられており、受講後に行われる知識テストに全問正解することで、その効果を確認することができる。営業部門の教育に係る確約は5年間適用されることから、競争委員会は、当該確約により、メタの営業部門の行動に関して予備的評価で確認された競争上の懸念が改善される可能性が高いと判断している。
 
3 広告事業者向け新インターフェイスの提供
 第三に、メタは、広告サービス事業者向けの新たなAPI「レコメンデーション機能」を開発することを確約する。このAPIは無料で提供され、対象事業者は、メタが管理するソーシャルネットワーク上で商品の推薦を求める個別の照会(queries)を送信したり、個別の入札についての、問題の調整を依頼したりすることができるようになる予定である。広告事業者向け新インターフェイスの提供に係る確約は3年間適用される。競争委員会は、このAPIにアクセスするための基準が十分に正当化され、客観的で透明性があり、非差別的である限り、競争上の懸念に対処できる可能性があると考える。さらに、これらの確約の実施により、予備的な評価で特定された行為が広告主の広告サービス市場に及ぼした影響に対処できる可能性が高いと言える。本確約は、メタと広告サービス提供者の間の競争に悪影響を及ぼすおそれのない条件の下で、広告サービス提供者は、自ら選択したモデルに従って、自らのビジネス及び顧客の広告キャンペーンを展開できることを保証することを意図している。
 
4 確約の地理的範囲
 地理的範囲に関しては、180日以内に、特にフランス国内のメタのサービスのユーザーを対象とした広告キャンペーンに1回以上参加したことのある全ての広告サービスプロバイダーが対象となる。ただし、事業者が確約の範囲に含まれ、確約に規定された条件を満たす限り、事業者は「MBT AdTech」プログラムに関連する利点の恩恵を受け、地理的制約なしに、全ての広告キャンペーンで「レコメンデーション機能」を使用することができる。
 
5 監視受託者(monitoring trustee)の中心的役割
 最後に、メタが提案した確約案は、そのフォローアップに責任を持つ受託者に中心的な役割を与えるものとなっている。監視受託者はメタから独立して、必要な資格、特に法律、統計、ITに関する資格を有していなければならない。また、その任務の遂行に必要な全ての情報に要求があればすぐにアクセスできるようにしなければならない。また、監視受託者は、メタに警告し意見を出す権利もあり、必要であれば、メタから通知された決定のうち客観性や比例性を欠くために確約を歪めることになると監視受託者が考えるものについて、競争委員会に通知する権利もある。
 
メタの市場支配力
・ソーシャルネットワークサービス
 フェイスブックは、他のプラットフォームに比べて消費者ネットワークが広く、幅広いニーズに応えることができるため、ユーザーにとって必要不可欠なプラットフォームである。従って、フェイスブックを傘下に持つメタは、ソーシャルネットワークサービス市場において、大きな市場支配力を有していると思われる。
 具体的には、Médiamétrie(訳注:フランスのデジタルメディアの使用状況を研究する団体)によると、フェイスブックと競合する他のソーシャルネットワークの利用者数は著しく低く、何年も前から変わっていないとしている。Médiamétrieによると、2020年8月の1か月あたりのビジター数では、スナップチャット(Snapchat)、リンクトイン(Linkedin)、ツイッター及びPinterestは、それぞれフランスで13位、27位、35位、38位のビジター数を記録している。メタの主要な競合相手であるスナップチャットの利用者数は、フェイスブック及びインスタグラムの合計数の約3分の1である。
 
・非検索連動型オンライン広告枠
 メタは、フランスの非検索連動型オンライン広告市場において、支配的地位を有すると考えられる。また、ソーシャルネットワーク上のオンライン広告に限定した市場においても、市場シェアが著しく高いメタが支配的地位を占める可能性が高い。
 e-pub observatory(訳注:フランスにおける広告売上高の推移等を対象とした調査報告)の統計で使用したデータのみに基づくと、フランスの非検索連動型オンライン広告市場におけるメタの市場シェアは、2018年49%、2019年50%であった。SNS関連オンライン広告市場におけるメタの市場シェアは、2019年約90%、当該市場にYouTubeを含めると同年で75%であった。
 さらに、非検索連動型オンライン広告市場は、主にメタが享受する大きなネットワーク効果に起因する大きな参入・拡大障壁によって特徴付けられている。

 

フランス競争委員会、著作隣接権に関するグーグルの確約案を受け入れ

2022年6月21日 フランス競争委員会 公表

原文
【概要】

 フランス競争委員会(以下「競争委員会」という。)は、著作隣接権(related rights)に対する報酬に関する、透明性を確保した評価に必要な交渉及び情報共有のための枠組みを構築するというグーグルの確約案を受け入れ、これらの確約案を拘束力のあるものとする。
 
背景
 本日(2022年6月21日)、競争委員会は、Alphabet Inc、Google LLC、Google Ireland Ltd及びGoogle France(以下「グーグル」という。)の確約を受け入れ、SEPM(訳注:雑誌出版社協会)、APIG(訳注:一般報道同盟)及びAFP(訳注:フランス通信社)の申告によって2019年11月に開始された本案に関する手続を終了した。当該申告において、SEPM、APIG及びAFPは、報道機関及び出版社の利益のための著作隣接権を創設することを目的とする2019年7月24日付け法律第2019-775号(以下「著作隣接権に関する法律」という。)の採択を受けて、グーグルが実施した行為を不当なものと非難していた。
 なお、2020年4月、競争委員会は、グーグルに対して、本案に関する決定までの緊急暫定措置の命令を発出した。そして、競争委員会は、グーグルに対して、著作隣接権の保護対象のコンテンツの使用(グーグル検索エンジン、グーグルニュース(News)及びディスカバー(Discover)サービスにおける報道写真及び記事の掲載)に対する報酬(remuneration)について、報道機関及び出版社と誠実に交渉するように命じた。また、2021年7月12日、グーグルが2020年4月に発出した命令を遵守していないとして、競争委員会は、グーグルに対して5億ユーロの制裁金を賦課し、暫定措置の命令を遵守しない場合には、定期的に制裁金が賦課されるとした。
 本案に関する審査の過程で、競争上の懸念が特定され、予備的な評価において正式に決定された。この評価が伝達された後、グーグルは2021年12月に最初の確約案を提出し、当該確約案は市場テストを受けた。そして、2022年4月に行われた委員会の聴聞を経て、グーグルは、市場テストで明らかになった懸念と委員会で示された懸念の両方に対処するために、2022年5月9日、これらの確約案の四つの新しい案(four new versions of these commitments)及び最終案を相次いで提出した。
 競争委員会は、グーグルの確約案について、明らかになった競争上の懸念を解消する可能性が高く、実質的で、信頼性が高く、検証可能なものであると認定した。そして、競争委員会は、本件確約案を受け入れ、拘束力を持たせることを決定した。当該措置は、5年間適用され、競争委員会の合理的な決定に基づき、1回に限り5年間更新される予定である。
 
 申告された行為及びこれまでの手続上の措置に関する再確認
 報道分野に対する深刻かつ差し迫った損害を考慮して、2020年4月、競争委員会は、報道機関及び出版社の保護対象のコンテンツの使用に関する報酬の支払について、グーグルに対して誠実に交渉させることを目的とする暫定措置を命じた。
 本命令にもかかわらず、2021年7月、命令不遵守の決定において、競争委員会は、グーグルがそのサービスにおける、保護対象の報道コンテンツの現在の使用に関して、報道機関及び出版社との交渉を頓挫させることが可能であったと認定した。当該認定において、特に以下の点が明らかになった。
・暫定措置命令で規定された3か月間の交渉期間のほぼ全期間において、グーグルは、グローバルなライセンス契約の締結に向けた交渉を組織的に指示しており、その主な対象は、これまでグーグルのポータルサイトではアクセスできなかった報道記事全文の掲載を前提とした、ショーケース(Showcase)と呼ばれる新サービスであった。こうした行為の結果、報道機関及び出版社は、複数回にわたり、グーグルにその希望をはっきりと伝えたにもかかわらず、交渉期間のほとんど全てにわたり、保護対象のコンテンツの現在の使用に対する具体的な報酬について交渉することができなかった。
・グーグルは、「General and Political Information」(IPG)認証を受けていないタイトルの報道コンテンツに対する報酬の原則を除外し、報道出版社が再利用するコンテンツに対する報酬を報道機関が得ることを認めないことによって、著作隣接権の適用範囲を大幅に縮小していた。
・最後に、グーグルは、知的財産法L.218-4条に基づく報道コンテンツの表示から生じる収益の概念について、保護対象のコンテンツが表示されるグーグル検索ページの広告収入のみをこの基準の一部として考慮することによって、著しく制限的な概念を採用していた。実際、グーグルは、保護対象のコンテンツの表示を通じて、グーグルのサービスにもたらされる魅力から生じる間接的な収益を除外しており、収集するデータ量を増やし、ターゲット広告を配信する能力を向上させ、ユーザーがオンライン検索サイトで有料のスポンサーのリンクにアクセスする可能性を高めることとなった。
 
競争上の懸念
 本案に関する審査の過程で、競争委員会の審査部門は、「予備的評価」の文書において、グーグルの行為に関する複数の競争上の懸念を正式に発表した。これらの懸念は、以下の3点からなる。
 
・不公正な取引条件
 まず、グーグルは、グーグルの既存サービスにおける保護対象のコンテンツの表示についての著作隣接権に基づく交渉及び報酬の支払を拒否することによって、報道機関及び出版社に対し、EU機能条約第102a条及びフランス商法典L.420-2条における支配的地位の濫用を構成する不公正な取引条件を課した可能性がある。
 
・差別的取扱い
 次に、著作隣接権に関する法律が施行された時点で、全ての報道機関及び出版社に対して、各社の置かれた状況の検討とは無関係に、報酬を支払わないこととすることにより、グーグルは、客観的に正当化されることなく、異なる状況に置かれた経済的な利害関係者を同一に取り扱ったと考えられ、したがって、フランス商法典L.420-2条及びEU機能条約第102c条1(c)における支配的地位の濫用を構成する差別的取扱いを行ったと考えられる。
 
・脱法行為
 最後に、グーグルは、その支配的地位を濫用し、特に、報道機関及び出版社が無償でライセンスを付与できることを利用して、グーグルのサービス上で、が保護されたコンテンツの表示について、交渉の余地がなく、組織的に報酬を支払わないという原則を貫き、報酬を決定するために必要な情報の伝達を拒否するなどして、著作隣接権について脱法行為を行っている可能性がある。
 
グーグルの確約
 競争委員会による予備的な評価の結果として、グーグルは、2021年12月9日、確約案を提出した。これらの確約案は、市場テストを受け、競争委員会の聴聞会で議論された。この聴聞の後、グーグルは、確約案の四つの新しい案を立て続けに発表し、最終的に2022年5月9日に大幅に改善された最終案が提出した。当該確約の内容は以下のとおり。
 
・適用範囲
 グーグルは、確約の適用対象を、IPG認証の有無にかかわらず、知的財産法典(以下「IPC」という。)L218-1条が適用される全ての出版社に拡大する。サードパーティの出版物に統合された報道機関の著作隣接権についても同様に適用され、現在では明示的に対象とされている。
 また、グーグルは、直接又は専門家の団体を通じて、著作隣接権について既にグーグルと交渉を開始した又は契約を締結した報道機関及び出版社に対しても、確約の適用対象を拡大することを提案している。既存の契約を締結している報道機関及び出版社は、既存の契約に基づき合意した報酬がこの改正又は終了の日まで適用され続けるということを前提に、グーグルと新たな交渉を行うことができるように、それらの契約を無償で修正又は終了することができる。
 
・誠実な交渉
 グーグルは、IPC L.218-4条に規定された方法及び透明で客観的かつ非差別的な基準に従って、出版社及び報道機関からの要請に応じて、グーグルのサービス上での保護対象のコンテンツの2次利用に対する報酬について、「誠実に交渉」することを確約する。また、グーグルは、ショーケースのサービス又は他の新たなグーグルのサービス及び著作権保護対象のコンテンツの既存の使用(existing use)に関して、別途独立した交渉を行うことに明示的に同意する。
 
・報酬の透明な評価のために必要な情報の伝達
 グーグルは、IPCのL.218-4条に規定されているように、報酬案について透明性のある評価を行うために必要な情報を伝達することを確約する。
 この目的のために、グーグルは第1段階として、最小限の情報の「基礎」を、各交渉当事者に対して、個別交渉の場合は10営業日以内に、集団交渉の場合は15営業日以内に、それぞれ伝達することを計画している。この基礎には、グーグル検索、グーグルニュース及びグーグルディスカバーにおける保護対象のコンテンツの印刷回数及びクリックスルー率(訳注:ウェブサイト上に広告が表示された回数に対する当該広告がクリックされた回数の割合)のほか、フランスにおけるグーグルの収益に関するデータ(直接、間接又はオンライン広告の代理店としての役割から生じるもの)が含まれる。
 また、第2段階として、グーグルは、報道機関及び出版社から要求された追加の関連情報を、独立した監視受託者の監督の下で、15営業日以内に提供する。監視受託者は、そのような要求の技術的な実現可能性又は関連性について、グーグルに対して拘束力のある意見を発表することができる。また、監視受託者は、必要に応じて、情報の機密性を確保するための措置を採る。最も機密性の高いデータ(フランスにおけるグーグルの検索広告及びディスプレイ広告の収益など)の共有は、監視受託者及び当該監視受託者の専門家に限定される。この仕組みによって、グーグルの企業秘密を保護する正当な要求と、報道機関及び出版社が保護対象のコンテンツの表示からの直接的・間接的な収益を評価するために必要な情報を得る必要性との間で調和が図られている。
 
・交渉の中立性
 グーグルは、交渉によって、保護対象のコンテンツのクロール(訳注:検索エンジン内のシステムがウェブ上の文書や画像等を定期的に取得し、自動的にデータベース化すること)、ランク付け又は表示に影響を及ぼさないようにし、グーグルと報道機関及び出版社との間に存在し得る他の経済的関係に影響を及ぼさないようにするため、必要な措置を採ることを確約する。
 
・差止命令不遵守の決定に対する控訴取下げ
 グーグルは、暫定措置の命令不遵守の決定に対する控訴取下げを確約する。したがって、2021年7月12日に、競争委員会が課した5億ユーロの制裁金は確定する。
 
・困難な場合の仲裁手続
 グーグルは、交渉開始後3か月以内に報酬額を報道機関及び出版社に提案することを確約する。当事者が、この交渉期間内に合意に達しない場合、当事者は報酬額を決定するために、仲裁裁判所に問題を付託する権利を有する。報道機関及び出版社の限られた財源を考慮して、当事者は、希望すれば、最初の手続及び控訴手続の両方で、仲裁人の報酬の全額を支払うようにグーグルに求めることができる。
 
・承認された独立の監視受託者による確約の監視
 競争委員会が承認した独立の監視受託者は、確約の履行を確保し、必要に応じて、技術、財務又は知的財産の専門家のサービスを利用できる。
 また、監視受託者は、グーグルと報道機関及び出版社との間の交渉を監督し、また、グーグルが報道機関及び出版社に提供すべき最小限の情報について、年次の見直し及び更新にも関与する。
 出版社又は報道機関の認証に関する紛争、報道機関のドメインに保護対象のコンテンツが含まれているかどうか、追加情報の要求の実現可能性又は妥当性、追加情報の要請に対する応答が出版社及び報道機関に伝えられる方法について、監視受託者は、必要に応じて、競争委員会に意見を提出・提案し、当事者間で生じる摩擦の解決について積極的な役割を果たすこととなる。監視受託者の意見及び提案は、報道機関及び出版社を拘束するものではないが、グーグルは、それらに従うことを確約している。
 この仕組みによって、本件の確約は、グーグルを拘束する一方、報道機関及び出版社が適切と考える場合には、他の法的手段を通じて自らの主張を追求する自由が守られ、迅速な紛争解決につながるものとなる。

韓国

KFTC、販売店に対する優越的地位を濫用していたとして、韓国GMに対して是正命令を発出

2022年6月2日 韓国公正取引委員会 公表

原文(韓国語)
原文
【概要】

 チョ・ソンウク委員長が指揮する韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)は、自動車メーカーであるGM Korea(以下「韓国GM」という。)が、自社の自動車を販売する販売店に対し、優越的な交渉力を濫用して特定のオンラインチャンネルでのみオンライン広告活動を実施させていたとして、是正措置を命ずることを決定した。
本措置は、KFTCが自動車市場における販売店の事業活動を不当に制限する供給事業者の行為を特定し、是正させた点に意義がある。また、本措置を実施することにより、販売店が様々な販促活動により顧客獲得競争を行うこととなり、消費者の利便性の向上に寄与することが期待される。
 韓国GMは、2016年4月1日から現在まで、自社の自動車の販売を委託している販売店に対し、広告の掲載をフェイスブックのみとすることを義務付けていた。韓国GMが配布した「シボレー販売店ソーシャルメディア活動ガイドライン」によると、フェイスブック以外のオンラインメディアチャンネルでの広告は禁止されており、これは販売店の販促活動であるオンライン広告活動を制限する行為に該当する。
 また、韓国GMはオンライン広告活動に関する厳しいルールを設けた。具体的には、上記ガイドラインに違反した販売店にはペナルティポイントを課し、上記ガイドラインを遵守する旨の確約書の提出を義務付けていた。
韓国GMは、販売店の販促活動の内容を一方的に決定し、販売店にそのとおりに実施することを要求していた。これは、供給事業者が販売事業者の事業活動を不当に妨害する行為であり、独占規制及び公正取引に関する法律(以下「公正取引法」という。)及び代理店取引の公正化に関する法律(以下「代理店法」という。)により禁止されている行為である。
 なお、代理店法附則第2条により、代理店法施行前の2016年12月22日までに行われた行為については(旧)公正取引法が、代理店法施行後の2016年12月23日以降に行われた行為については代理店法が適用される。
 
<違反期間に応じて適用される法律>

違反期間

適用される法律

2016年4月1日~2016年12月22日

(旧)公正取引法第23条第1項第4号

2016年12月23日~2020年12月31日

代理店法第10条第1項

 KFTCは、韓国GMに対し、当該行為を中止し、今後、同一又は類似の行為を繰り返さないよう命じた。また、KFTCは、韓国GMに対し、是正命令を受けた事実を全販売店に通知するよう命じた。
 
 本措置は、販売店の販促活動を制限する行為であり、販売店のオンライン広告活動を特定のメディアチャンネルに長期間限定するという優越的な交渉力の濫用行為をKFTCが阻止したという点に意義がある。
 また、本措置が、国民生活に密着した自動車市場において、様々な販売活動を通じて販売店間の自由な競争を促進し、消費者の厚生の向上に寄与することが期待される。
 KFTCは、販売店及び代理店の自律性を確保するため、供給事業者による事業活動への不当な介入を継続的に監視する予定である。また、KFTCは今後、販売店及び代理店の権益を侵害する違反行為に対して厳格な措置を採る。
 
課徴金を賦課しなかった理由
 KFTCは、韓国GMが販売店発展協議会と協議を行っていることから、韓国GMの法令違反が悪意のある意思や目的を持つものとは考えられないこと、また、オンライン広告活動を制限することによって、韓国GMが不当な利益を得ていないことを考慮した。

 

KFTC、日韓・中韓航路におけるコンテナ定期船会社による海上運賃カルテルに対して制裁

2022年6月9日 韓国公正取引委員会 公表
原文
【概要】

 韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)は、日韓航路において、2003年2月から2019年5月までの間に合計75回にわたり海上運賃のカルテルを行っていたとして、コンテナ定期船会社15社(訳注:韓国企業14社、韓国外の企業1社、市場シェア86.5~93.7%)に対して、是正命令を発出するとともに、暫定で合計800億ウォンの課徴金を賦課した。また、中韓航路において、2002年1月から2018年12月までの間に合計68回にわたり海上運賃のカルテルを行っていたとして、コンテナ定期船会社27社(韓国企業16社、韓国外の企業11社、市場シェア70.1~83.5%)に対して、是正命令を発出することを決定した。
 コンテナ定期船会社らは、約17年間にわたり、基本運賃の最低水準、各種付帯運賃の導入及び引上げ、大口の荷主に対する入札価格など様々な運賃についてカルテルを行っていた。
 これらのコンテナ定期船会社は、合意した運賃を実施するために、他の船会社の貨物を互いに奪い合わずし、既存の取引先を維持するようにする「既取引船会社の保護」に合意することによって、運賃に係る競争を制限した。
 さらに、合意した運賃を受け入れなかったり、(合意に参加しない)アウトサイダーのコンテナ定期船会社を利用等する荷主などに対して、コンテナの入庫を禁止したり、予約の取消しによって共同で出荷を拒否する等して、合意した運賃の受入れを事実上強制していた。
 また、コンテナ定期船会社は、運賃カルテル、既取引船会社の保護、出荷拒否などの行為が公正取引法違反であることを明らかに認識しており、あらゆる手段を講じて共同行為を隠蔽した。
 さらに、こうした運賃の合意に係る会合を招集し、合意した運賃を遵守するように促した日韓航路の「韓国近海輸送協議会」(以下「韓近協」という。)に対して、事業者団体禁止行為違反により、是正命令を発出するとともに、課徴金2億4400万ウォンを賦課し、中韓航路の「黄海定期船会社協議会」(以下「黄定協」という。)に対して是正命令を発出することとした。
これらのコンテナ定期船会社は、韓近協及び黄定協などを中心に招集した会合を通じて、合意の実施状況を詳細に確認し、特に本件の共同行為の初期から中立監視機構などを通じて運賃の監査を行い、合意に違反したコンテナ定期船会社に対して罰金等を科していた。
 今回の措置は、2022年1月の韓国と東南アジアを結ぶ航路における運賃カルテルに対する制裁に続き、日韓及び中韓航路において17年間にわたり違法に行われた運賃カルテルに対する制裁である。これにより、これまで違法に行われてきたコンテナ定期船会社の運賃カルテルを根絶するきっかけとなることが期待される。
 KFTCは今後、共同行為に対する海運当局による規制が強化され、輸出入を行う荷主の被害が予防されるように、海運当局と緊密に協力して関連制度の改善を推進していくことを計画している。

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