その他
カナダ
カナダ競争当局によるG7競争サミットの開催
2025年10月3日 カナダ競争局 公表
原文
【概要】
1 カナダ競争局及びイノベーション・科学・経済開発省がオタワで開催したG7の競争当局及び政策立案担当部局(ポリシーメーカー)のトップ等が出席する「G7競争サミット」は10月2日に閉幕した。
2 このG7競争サミットでは、主にデジタル市場における競争上の問題、特にアルゴリズム・プライシング(注1) と、それが競争・市場・経済に与える影響について焦点を当てた。具体的には以下の事項を含む。
(1)アルゴリズム・プライシングに関する最近の法執行経験及び事件探知手法
(2)デジタル市場における行為に起因する新たな政策的課題
(3)最近の事前相談、実態調査及びアドボカシーの取組
(4)アルゴリズム・プライシングが競争政策及び法執行に対してもたらす潜在的な影響
(注1) 市場や競合の動向を分析し、自動的に価格を設定・変更する仕組みのこと。
3 このサミットには、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国及び欧州連合(EU)から競争政策担当官及び政策立案担当部局代表者が参加した。また、経済協力開発機構(OECD)もサミットに参加し、議長国であるカナダからの要請を受け、議論の参考資料として、アルゴリズム・プライシングと競争に焦点を当てた新たなスコーピングノート (注2) を作成、公表した。
(注2) 調査や政策検討を開始する前に、その目的・範囲・手法・想定論点を整理し、関係者間で共通理解を得ることを目的に作成する文書のこと。
4 過去のG7競争当局及びポリシーメーカーズサミットの成果を踏まえ、競争当局は「デジタル市場における競争を促進するための各当局の取組の要約(Compendium)」の更新版を公表した。この資料は、G7当局がデジタル市場に注力していることを示し、各当局の取組を詳細に記すと同時に、アプローチの共通点について強調している。
5 このサミットは、G7の競争当局及び政策立案担当部局が新たな競争上の問題、動向、経験を議論するための貴重な機会を提供する。複数の管轄区域にまたがる競争に影響を与える活動に効果的に対処するには、G7パートナー間の知識の共有と協力体制の構築が不可欠である。
6 マシュー・ボスウェル競争庁長官は、次のように述べた。
「新たな技術の普及によって生じた競争上の問題に継続して対応するため、G7のパートナーを招いて会合を開催できたことを喜ばしく思う。我々は、国境を越えて広がるアルゴリズム・プライシングによる競争への影響に対処するために必要となる法執行上の論点や政策枠組みについて、議論を深めることができた。これらの議論に参加したG7のパートナーに感謝する。」
デジタル市場における競争を促進するための各当局の取組の要約(Compendium)(概要)
1 主な課題
G7競争当局は、デジタル市場における複数の競争上の懸念を特定した。その中で最も深刻なのは、少数のデジタルプラットフォームに市場支配力が集中していることである。こうした支配的企業は相互に結びついたエコシステム全体で自らの立場を利用し、反競争的な行為を通じて市場参入を制限し、消費者の選択肢を減少させることで競争を阻害するおそれがある。典型例として、検索やアプリストア等において自社が提供する製品・サービスを優遇する、いわゆる「自己優遇」が挙げられる。
また、大規模プラットフォームによる大量のユーザーデータの収集や利用は、AIの重要な資源となる一方、市場支配力の強化にもつながり得る。さらに、相互運用性の制限や高額なスイッチングコストは、利用者・企業によるサービスの切替えを困難にし、競争圧力やイノベーションを阻害する要因となる。これらに加えて、価格設定等におけるアルゴリズム活用の広がりが新たな市場への影響をもたらすといった指摘もあり、各競争当局は動向を分析している。
2 主な動き
G7競争当局は、デジタル市場における課題に対し、競争法の執行、法改正、市場調査や公開ヒアリングを通じたアドボカシーなど、多様な手段を組み合わせて対応している。伝統的な競争法の執行が中心となっている一方で、各国ではデジタル市場に特化した新たな法的枠組みを導入、又は導入を検討中であり、EUのデジタル市場法(DMA)、ドイツの競争制限防止法の改正、英国のデジタル市場・競争・消費者法(DMCCA)、日本のスマホソフトウェア競争促進法がその例である。これらは適用範囲に差異はあるものの、一定の規模以上のプラットフォーム事業者に対して具体的な行為規範を課すものである。
また、各競争当局は新たなリスクの把握にも注力している。カナダ競争局は2025年にアルゴリズム・プライシングに関する協議を実施し、EU競争総局はメタバース及び生成AIに関する意見募集やワークショップを開催した。フランス競争庁はクラウドコンピューティング及び生成AI市場の調査結果を公表し、公正取引委員会は生成AIに関する報告書ver.1.0を公表した。イタリア競争・市場保護委員会は航空業界の価格アルゴリズムに関する調査を実施中である。
さらに、各国では新規参入企業や重要なデータを保有する企業が関与する合併審査を厳格化するとともに、競争当局内にデジタルやデータを専門に扱う部門を設置し、対応を強化している。これと並行して、一部の当局は、競争、消費者保護、プライバシー、その他の関連規制当局間の連携強化を重視する動きも見られる。また、G7競争当局の一部は、AIガバナンス、サイバーセキュリティ、デジタルメディアを含むより広範な政策に貢献している。こうした業種横断的な取組によって、広範なデジタルエコシステム内の異なる枠組み間の相互作用を考慮した総合的な政策アプローチの重要性がより一層認識されている。
3 各競争当局の取組(注3)
G7各競争当局は、①デジタル市場における最近の執行事例やアドボカシー、②内部組織の強化や新たな調査ツール、③デジタル市場規制の見直し、④データ保護やプライバシー分野の規制との連携等について、最新の取組を報告している。
(注3)G7各競争当局の取組の一部を紹介したものであり、詳細は原文を参照。
(1) カナダ競争局
① アルゴリズム・プライシングに関する理解を深める観点から、2025年6月に「アルゴリズム・プライシングと競争」に関する議論ペーパーを公表し、意見募集を実施。
② 内部の体制強化の一環として、中央情報ユニット(Central Intelligence Unit)は、コーディングや経済学、法執行のスキルのあるアナリストを採用し、デジタル市場における競争上の問題を検知する能力を拡大・強化。
③ 2023年及び2024年の競争法改正によって、市場調査の実施や反競争的な協定への執行等に対する競争局の権限が強化。
④ 2023年6月にカナダデジタル規制フォーラムを設立し、カナダ放送通信委員会やカナダ個人情報保護委員会等と連携。AIをテーマにしたフォーラムを開催するなど、デジタル市場及びデジタルプラットフォームに関する情報共有と協力を強化。
(2) フランス競争委員会
① メタ、アップルやグーグルによる反競争的行為に対する調査や決定(制裁金の賦課や是正措置)、オンライン動画コンテンツ分野を対象にした職権調査等を実施。
② 競争委員会内のデジタル経済ユニットが、公共調達における談合検知ツールの開発を開始。また、同ユニットは、デジタル分野におけるアドボカシーも主導(クラウドや生成AIを対象にした市場調査に関与)。
③ デジタル市場法(DMA)とフランス競争法との連携に向けた国内法の整備(フランス競争委員会に対するDMAに基づく調査権限の付与)。
④ データ保護規制当局との協力体制の構築。2023年12月の共同宣言(データ保護と競争―共通の野心)に基づき、モバイルアプリケーションに対する意見書の公表(2024年9月)やAIの開発をテーマにしたセミナーを共同で開催(2025年3月)。
(3) ドイツ連邦カルテル庁
① 第10次改正ドイツ競争法に基づく「市場全体の競争に卓越した重要性を持つ事業者(注4)」の指定(グーグル、メタ、アマゾン、アップル及びマイクロソフト)や法執行を推進。
② 連邦カルテル庁の組織再編を実施し、従来のITユニットを独立した部門(department)へと格上げ。また、2025年6月に、「AIと競争に関する専門家グループ」を設立し、AI市場における様々な競争上の問題点について議論。
③ 第11次改正ドイツ競争法に基づき、連邦カルテル庁に対し、DMA違反を調査する権限や市場調査の結果を踏まえて是正措置を課す権限が付与。
④ 連邦ネットワーク庁や連邦データ保護庁等の5つの規制当局との連携を推進。各規制当局による専門知識や知見の共有を通じて、デジタル市場における整合的な法適用に向けた共通のアプローチを構築。
(注4)paramount significance for competition across markets (PCMS)
(4) イタリア競争・市場保護委員会
① アマゾン(マーケットプレイス上の取引制限)やグーグル(相互運用性の欠如)等に対する調査(制裁金の賦課や是正措置を決定)。航空運賃に関するアルゴリズムを対象とした市場調査を実施。
② 2024年に競争・市場保護委員会内に新データサイエンスユニットを設置し、調査や法執行等の業務を支援する高度なツールを開発中。
③ 新たな競争枠組みが導入され、競争・市場保護委員会に対し、届出基準を満たさない合併案件も審査を行える権限(Merger call-in power)や市場調査の結果を踏まえて是正措置を課す権限が付与。
④ 競争とプライバシーとが交錯する領域の案件の増加を受け、競争・市場保護委員会は、2025年7月にデータ保護当局との間で覚書を署名。
(5) 公正取引委員会
① 主要なデジタルプラットフォームに対する競争法の執行、生成AIやコネクテッドTV、配車アプリ等を対象にした市場調査を実施。
② 新たな部署の新設や増員、デジタル人材の採用を通じた体制強化。スマホソフトウェア競争促進法の完全施行に向けた国際連携の推進(2025年1月にデジタル競争に関するグローバルフォーラムを開催)。
③ 外部有識者やステークホルダーとの継続的な対話に基づき、スマホソフトウェア競争促進法の完全施行に向けた規則やガイドラインの策定。
④ 公正取引委員会は、経済産業省からの措置請求を含む各種情報に基づき、必要な予備調査を経て、2024年11月26日にアマゾンジャパンに対する立入調査を実施。
(6) 英国競争・市場庁
① グーグル(広告技術分野における自社優遇)やメタ(マーケットプレイス上のデータ利用)等に対する調査を実施。AI基盤モデルに関する調査結果を更新。
② 競争・市場庁内部に、エンジニアや行動科学者、デジタルフォレンジックの専門家等から構成されるデータ・技術・インサイト執行担当局を設立し、AIやその他新興技術における動向を継続的にモニタリング、分析結果や専門知識を競争・市場庁内に共有。
③ 競争・市場庁内のデジタル市場ユニットが、2025年1月以降、デジタル市場・競争・消費者法に基づく戦略的市場地位の指定に係る調査を実施。
④ デジタル規制協力フォーラム(注5)の枠組みの下、デジタル規制に関する効果的かつ一貫したアプローチを実現するため、規制当局間のキャパシティビルディングを推進。また、2025年は、AIやオンライン安全性の向上等の分野に注力。
(注5)競争市場庁、通信庁、情報コミッショナー事務局及び金融行動監視機構から構成される。
(7) 米国
ア 連邦取引委員会
① テックプラットフォームによる検閲や、企業による消費者データ・アルゴリズム・AI等の技術を用いた価格決定に対する調査を実施。アルゴリズムやデジタルプラットフォームが関係する案件についてアミカス・ブリーフを提出。
② 2023年に内部に設立された技術局(Office of Technology)が、データサイエンスやAI、セキュリティなど幅広い専門分野に関する深い知見を活用し、法執行や訴訟を担当するチームを支援。
③ 司法省反トラスト局と共同で、合併規則を見直し、デジタル企業が関与する合併案件に対し、新たな競争上の脅威を特定する際に活用。
④ 市場における競争の促進と政策の整合性確保に向けた取組を支援するため、米国内の他の規制当局との連携を推進。
イ 司法省反トラスト局
① グーグルやアップル、RealPage 等に対する反トラスト訴訟を提起。アミカスプログラムを通じて、デジタル市場に関する専門的知見を連邦裁判所に提供。
② デジタル市場における競争上の問題に対処するため、経験のある弁護士や経済学者、データサイエンティスト等を活用。
③ デジタル競争に関連する複数の法案が米国議会で審議されているものの、成立に至った法案はなし。既存の反トラスト法でデジタル市場における競争上の問題に対処。
④ 2025年3月、自由な市場競争を阻害し、消費者、労働者、企業に損害を与える反競争的な州及び連邦の法令の撤廃を提唱するため、「反競争的規制タスクフォース」を発足。
(8) 欧州委員会競争総局
① グーグル、アップル及びメタによる反競争的行為に対する欧州競争法の観点からの調査(制裁金の賦課や是正措置の決定)を実施。アップル及びメタによるDMA違反に対する調査(制裁金の賦課や是正措置)を実施。
② 法学者や経済学者、フォレンジック専門家等から構成されるデータ分析技術ユニット(Data Analysis and Technology Unit)を設置し、デジタル市場における執行能力を強化。また、談合探知ツールを活用し、アルゴリズムによる共謀を探知。
③ 2023年5月からDMAの適用を開始し、デジタル競争問題への対応を強化。合併ガイドラインの改正に向けた意見募集を実施。
④ 欧州委員会と欧州データ保護委員会が、一般データ保護規則とDMAの相互作用に関するガイドラインを共同で策定することで合意。
4 結論及び次のステップ
今後の展望として、デジタル市場における競争政策と執行の将来を形作る可能性のある重要な知見がいくつか浮かび上がる。第1に、全G7競争当局は、絶え間なく進化するデジタル市場に適応できる十分な柔軟性を備えた、迅速かつ機敏で効果的な執行体制の必要性を認めている。第2に、国際的な関与は依然として不可欠であり、デジタルプラットフォームが国境を越えて活動する中、競争当局間の連携は競争的な市場とイノベーションの促進に寄与し得る。第3に、デジタル市場における競争政策は、データ保護や消費者保護を含む他の政策枠組みとの整合性から大きな恩恵を受ける可能性がある。最後に、G7の競争当局はこれらの取組に貢献する上で有利な立場にある。
近年得られた教訓と開発されたツールは、デジタル市場におけるより機動的かつ効果的な競争環境を形作るための強固な基盤を提供する。そのような取組は、イノベーションを促進し、消費者の選択を守り、デジタル市場が開かれた競争可能な場として維持されることを確実なものとする。
ニュージーランド
ニュージーランド
ニュージーランド政府、大規模な競争法改正を公表
2025年9月16日 ニュージーランド政府 公表
原文
【概要】
1 ニコラ・ウィリス経済成長担当大臣及びスコット・シンプソン商務・消費者問題担当大臣は、約20年ぶりにニュージーランド商業法(訳注:ニュージーランドの競争法)を強化し、公益の保護を拡充するとともに、企業により高度な法的確実性を提供すると述べた。
2 ウィリス大臣は、次のように述べた。
(1) 今回の法改正は、企業にとって、より確実で、信頼性の高い事業環境を整備するものであり、ニュージーランド政府の公約を実現するものである。
(2) 競争は、成長やイノベーション、生産性にとっての重要な原動力である。市場が開放され公正であれば、消費者も企業も繁栄する。しかし、現行の法制度は時代遅れで不明確であり、最も重要な市場の一部が少数の企業によって支配される結果を招いている。
3 シンプソン大臣は、次のように述べた。
(1) 本改正により、ニュージーランド商務委員会(以下「商務委員会」という。)は、新たに付与される権限にふさわしい、より効果的で目的に適合した機関へと強化される。
(2) 独立した調査(注1)によると、商務委員会の委員会(Board)は、現時点では、ガバナンス機能と規制に関する意思決定機能を併せ持つ体制になっており、現在の組織体制の範囲を越えるほど成長している。商務委員会は、両機能を明確に分離することで、消費者により良い成果をもたらすことができる。
(3) 競争は不可欠であるが、公共の利益に資し、競争を阻害しない場合には、競合企業間の協力が有益な場合もある。本改正は、企業間の協力の承認を合理化するものである。
(4) 商務委員会には、競争上のリスクの高い合併が完了する前の一時差止め、又は「コールイン」(訳注:事前介入)など、より強力な権限が付与される。この権限により、問題のある合併を適切に評価できるようになる。
また、商務委員会は、合併に起因する競争上の懸念を解消するため、企業からの行動的是正措置を内容とする確約(behavioural undertakings)を受け入れることができるようになる。さらに、明確な法定審査期間を設けることにより、より迅速かつ透明性の高い判断が可能となる。
(5) これらの改正により、合併規制が目的に適合したものとなり、競争を阻害する可能性のある企業結合を特定し、差し止めることが容易になる。
(6) 重要なのは、これらの改正により、合併審査における承認基準がより厳格化される点である。これにより、市場支配力のある企業の強化を防ぎ、企業及び消費者に、より多くの選択肢、競争的な価格、公正な市場をもたらすことになる。
(注1) ニュージーランド政府が、ビジネス・イノベーション・雇用省(Ministry of Business, Innovation and Employment)に委託し、2024年9月から2025年6月にかけて行った商務委員会のガバナンス及び有効性に関する調査のこと。
4 主な改正点(抜粋)
(1) 有益な協業の効果的な支援
・ 有益な協業を促進するため、協業に関する認可手続の合理化や認可手数料の軽減措置を導入する。
・ 参加者が時間の経過とともに変化する取決めについても、認可・承認を可能とする。
(2) 是正命令による執行強化
・ 高等裁判所に是正命令を申請し、関係人に違反行為の是正を義務付ける権限を商務委員会に付与する。
(3) 機密情報の保護
・ 商務委員会の証拠収集能力を高めるため、企業や個人が商務委員会に対して提供する機密情報(注2)は、10年間、情報公開法に基づく情報開示の適用除外とする。
(4) 合併規制の改正
・ 支配的な企業が革新的なスタートアップを買収し、市場閉鎖を行う、いわゆる「キラー買収」についての評価を可能とする。
・ 連続買収への対応として、商務委員会は、3年間にわたる小規模買収のパターンを評価する権限が付与される。
(5) AI及びアルゴリズムの責任範囲の明確化
・ 既存の禁止事項がAI主導の行為に適用されることを確認し、企業がAIによって促進された反競争的行為について引き続き説明責任を負うことを保証する。
(6) 略奪的価格設定
・ ダンピングなどの略奪的価格設定は、法的不確実性のため、執行が限定されている。新たな客観的な基準により、コストを下回る価格設定がどのような場合にニュージーランド商業法に違反するかを明確にする。
(注2) 企業や個人は、情報公開法(OIA)に基づき情報が公開され、競合他社による報復や悪用のリスクが生じることを懸念している。
ニュージーランド政府は、商務委員会のガバナンスと組織構造の改革を進めることに合意した。2024年9月から2025年6月にかけて実施した商務委員会のガバナンス及び有効性に関する調査において、商務委員会は多くの点で良好なパフォーマンスを示していると評価された。しかしながら、最近の規制責任の拡大を踏まえると、商務委員会は、ガバナンスと規制に関する意思決定において二重の役割を担うという現在のガバナンスモデルでは支えきれないほど成長している。同調査の最終報告書では32の提言が示され、以下のような改革が進行中である。
・ 非常勤メンバーが過半数を占める新たな統治委員会(governing board)の設置。
・ 規制に関する意思決定機能を委員会(Committees)又はチーフエグゼクティブに対して適切に委譲。
・ 主に新設の法定化された委員パネル(statutory Commission panel)から委員を選出し、商業経験を含む関連する専門知識を有する個人で構成される委員会(Committees)を設置。
6 これらの改正内容は、ニュージーランド商業法改正案に反映され、クリスマス前にニュージーランド議会へ提出され、2026年半ばまでの成立が見込まれている。
7 また、2025年9月16日、ウィリス大臣は、政府の「成長推進(Going for Growth)」作業プログラムに関するアップデート(注3)を公表した。このうち、「競争力のあるビジネス環境」章の最新版では、企業にとって事業運営や成長がより容易になり、雇用創出や国民所得向上を実現するためのニュージーランド政府の取組を示している。
(注3)「成長促進」作業プログラムは、ニュージーランド政府が経済成長を促進するための枠組みであり、5つの柱(人材育成、競争環境、貿易・投資、イノベーション・技術及び成長インフラ)を軸に設計されている。