2022年6月

米国

FTC、ステロイド注射剤の開発・販売に関する競争を維持

2022年4月19日 米国連邦取引委員会 公表
原文 
【概要】
 米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は本日(2022年4月19日)、Hikma Pharmaceuticals PLC(以下「ヒクマ」という。)が3億7500万ドルでCustopharm, Inc.(以下「カストファーム」という。)を買収する条件として、カストファームの副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)であるトリアムシノロンアセトニド(以下「TCA」という。)関連事業を、カストファームの親会社であるWater Street Healthcare Partners, LLC(以下「ウォーター・ストリート」という。)を通じて、グループ会社であるLong Grove Pharmaceuticals, LLC(以下「ロング・グローブ」という。)に譲渡することを求めた。本件同意命令によって、ヒクマは、自社の開発パイプラインにおけるTCA製品の販売を中止又は延期させようとする動機を失うこととなり、ジェネリックのTCA市場における競争が確保されることとなる。歴史的にみて、ジェネリック医薬品の競合他社の新規参入は、患者にとって価格低下につながってきた。また、本件同意審決は、ロング・グローブに対して、TCA事業の競争力を将来にわたって維持するよう求めるとともに、ヒクマに対して、今後の TCA関連の買収について、FTCに承認申請をするよう求めている。
 ヒクマは、ニュージャージー州バークレーハイツに米国本社を置く、多国籍の製薬会社である。同社は、先発医薬品及び注射剤を含むジェネリック製品を製造している。カストファームは、主にジェネリック注射剤を開発しており、製造を契約メーカーに委託している。
 FTCの申立書では、この問題解消措置がなければ、ヒクマは自社の注射用TCA製品の開発を行わなくなり、TCA市場における付加的な競争が阻害されるおそれがあるとしている。
 ジェネリック製薬会社の存在と事業者数によって薬価が決まり、新たなジェネリック医薬品が市場に投入されるたびに薬価が下がる傾向が見られる。
 同意命令案で示された条件に従って、ウォーター・ストリート及びその子会社であるロング・グローブは、同意命令発出日から4年間、カストファームのTCA事業の運営を継続することが求められている。ロング・グローブは、複雑なジェネリック医薬品に特化した、専門的な医薬品開発会社である。パブリックコメント用に添付された分析資料で説明されているように、同意命令案では、ヒクマ及びカストファームが同命令における要件を遵守していることを報告させるための監視者を、FTCが任命することも可能としている。
 FTCは、申立書を発出し、同意命令案について意見募集を行うことを、賛成4票、反対0票で議決した。
 

 FTC、磁器エナメルフリットの北米市場の市場集中を懸念し、プリンスとフェローに3施設の売却を要請

2022年4月21日 米国連邦取引委員会  公表
原文
 FTCは、Prince International Corp.(以下「プリンス」という。)の親会社であるAmerican Securities Partners VII, L.P.(以下「アメリカンセキュリティ」という。)が競合のFerro Corp.(以下「フェロー」という。)を21億ドルで買収する計画について、プリンス及びフェローに対して、磁器エナメルフリット、ガラスエナメル及びフォアハース着色剤(訳注:フォアハースはガラスの温度を調整する工程)を製造する3施設の売却を求める措置を採った。本件同意命令は、磁器エナメルフリットの北米市場並びにフォアハース着色剤及びガラスエナメルの世界市場における競争を維持するためのものであり、合併後の当事会社及び事業分割の対象事業者(購入者)の双方は、今後10年間、当該市場に関わる特定の合併を行う際には、事前にFTCの承認を得なければならないとするものである。
 ガラス素材製品である磁器エナメルフリットは、家電製品、給湯器、調理機器等の耐熱、耐摩耗及び耐腐食コーティング(磁器エナメル)に不可欠な原材料である。ガラスエナメルは、ガラスの表面の着色及び装飾のために添加される液体ペースト及び粉末である。フォアハース着色剤は、ガラス瓶の製造工程でガラス炉のフォアハースで添加される、特殊な色彩を出すためのガラス素材の粉末である。
 同意命令に基づき、プリンス及びフェローが、アラバマ州リーズバーグに所在する磁器エナメルフリット及びフォアハース着色剤工場、ベルギーのブルージュに所在する、エナメルフリット及びフォアハース着色剤の工場並びに研究所並びにイタリアのカンビアゴに所在するガラスエナメル工場というプリンスの3施設を、KPS Capital Partners, LP。(以下「KPS」という。)に売却することによって、3市場全ての競争が維持される。
 テキサス州ヒューストンに本社を置くプリンスは、プライベート・エクイティ・ファンドであるアメリカンセキュリティの子会社である。プリンスは、磁器エナメルフリット、ガラスエナメル、フォアハース着色剤等の化学製品、鉱物及び工業用添加物を製造している。競合するフェローは、オハイオ州メイフィールドに本社を置く。
 申立書によると、磁器エネメルフリット、ガラスエナメル及びフォアハース着色剤には、十分な代替品が存在しない。本件買収計画により、磁器エナメルフリット市場における両当事会社間の競争は消滅することとなる。これにより、合併後の当事会社は、北米市場における磁器エナメルフリット及び世界市場におけるフォアハース着色剤の価格を単独で引き上げるおそれがある。また、本件買収計画により、ガラスエナメルの世界市場において、プリンスは独立した競合相手ではなくなり、合併後の当事会社と、その最大の競合相手となるFenzi Holdings SPV S.p.A.との間で、協調的行動が採られるおそれが増すこととなる。
 FTCの決定案及び同意命令案の条件に従って、アメリカンセキュリティは、求められた工場の売却に加えて、今後10年間、磁器エナメルフリット、ガラスエナメル又はフォアハース着色剤の製造及び販売を行うための資産を買収する際には、事前にFTCの承認を得なければならない。分割事業の購入者であるKPSは、今後3年間、購入者の属性にかかわらず、分割資産のいずれかを譲渡する際には、事前にFTCの承認を得なければならず、磁器エナメルフリット、ガラスエナメル又はフォアハース着色剤を製造及び販売を行う事業者にそれを譲渡する場合には、更に7年間、事前にFTCの承認を得なければならない。また、「意見募集のための分析」(Analysis to Aid Public Comment)のとおり、決定案及び同意命令案では、プリンスが決定及び命令に基づく義務並びに資産維持命令(Order to Maintain Assets)を遵守することを確保するために、FTCが監視者(monitor)を任命することも可能としている。
 FTCは、本件買収計画及び可能性のある問題解消措置の検討について、EU及びメキシコの競争当局と協力してきた。
 FTCは、申立書及び資産維持命令の発出並びに決定案及び同意命令案の意見募集を行うことを、賛成4票、反対0票で議決した。

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