米国
DOJ、Hewlett Packard EnterpriseによるJuniper Networksの買収計画の阻止を求めて提訴
2025年1月30日 米国司法省 公表
【概要】
1 米国司法省(以下「DOJ」という。)は、2025年1月30日、Hewlett Packard Enterprise Co.(以下「HPE」という。)が提案する、競合のワイヤレス・ローカル・エリア・ネットワーク(以下「WLAN」という。)技術プロバイダーであるJuniper Networks Inc.(以下「Juniper」という。)の140億ドルでの買収を阻止するためにカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提訴した。HPE及びJuniperは、それぞれ米国第2位と第3位の企業向けWLANソリューション・プロバイダーである。訴状では、合併計画は、当事会社間の激しい直接競争を排除し、価格を引き上げ、イノベーションを低下させ、米国の多数の企業及び機関の選択肢を減少させるもので、クレイトン法第7条に違反するとしている。
2 オミード・A・アッセフィ反トラスト局長代理は、次のように述べた。
「HPEと Juniperは成功した企業であるが、WLAN市場で競合他社として競争を続けるのではなく、既に集中している市場の集中をさらに高めるために、統合しようとしている。この合併がもたらす脅威は理論的なものにとどまらない。米国の病院や中小企業を含む我が国の重要な産業は、その使命を果たすためにワイヤレス・ネットワークに依存している。本件合併計画は、競争を著しく減少させ、イノベーションを弱体化させ、その結果、米国の経済の大部分は、より少数のWLANプロバイダーに対し、より多くを支払うことになる。」
3 ハードウェア、ソフトウェア及び高度な人工知能を含むWLANテクノロジーは、現代の職場にとって不可欠である。今日、何百万人もの米国人がワイヤレス対応機器からインターネットにアクセスし、企業のリソースを作成・共有している。小売店の従業員はワイヤレスで支払を処理し、在庫を記録している。医師は携帯電話やタブレットで医療記録にアクセスし、移動中にも救命処置が必要な患者の様子を追跡している。大学生はノートパソコンでノートを取り、寮の部屋から教材にアクセスする。ワイヤレス・ネットワークは、多くの従業員が雇用主のコンピュータ・ネットワークやインターネットに接続する主要な手段である。
4 訴状で主張されているように、Juniperは、マイナーなプレーヤーから米国の企業向けWLANプロバイダーのトップ3の一つに急成長した破壊的な力を持つ存在である。また、Juniperは、多くの顧客のワイヤレス・ネットワークの運用コストを大幅に削減する革新的なツールを導入した。このような競争圧力により、HPEは自社製品の値引き及び独自のイノベーションへの投資を余儀なくされた。HPEは、Juniperの存在感の高まりを認識し、エンジニア及び営業担当者向けの研修を必須とすることなどのキャンペーンを実施し、契約獲得を争う際にJuniperを「打倒する」ことを目指した。実際に、HPEの最前線の営業担当者は、JuniperがHPEの「顧客を奪おうとしている」機会が数十回もあったため、買収計画が発表されるわずか1か月前に、「Juniperの脅威は深刻である」と懸念していた。HPEの上級幹部もこの見解を共有しており、ある元HPE幹部は、Juniperとの「戦いにルールはない」とチームに念を押し、販売機会を求めて直接対決するときにJuniperを「打倒する」よう促した。
5 HPEは現在、この、自社より小規模で革新的な競合他社を買収しようとしている。HPEとJuniperの買収計画が実現すれば、既に高度に集中している市場がさらに統合され、米国企業は合併後のHPEと市場のリーダーであるCisco Systems Inc.の2社が市場の70%以上を支配する市場に直面することになる。この極めて重要なテクノロジー市場における競争の実質的な減少は、まさにクレイトン法が防止しようとしている脅威をもたらすものである。
FTC、テック・プラットフォームによる検閲について調査を開始
1 米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は、2025年2月20日、テック・プラットフォームがユーザーの発言内容や属性に基づき、サービスへのアクセスを拒否又は制限しているかどうかの実態をより深く理解し、また、こうした行為が法律に違反している可能性があるかどうかを調査するための公開調査として、一般からの意見を求める情報提供要請(RFI)を開始した。この一般からの意見提出の期限は2025年5月21日までである。
2 テック・プラットフォームによる検閲(Censorship)は、米国的ではない(un-American)だけにとどまらず、違法行為である可能性もある。テック企業は、ユーザーを排除するような、紛らわしい、あるいは予測不能な内部手続を採用することがあり、その決定に対して異議を申し立てることができない場合もある。テック・プラットフォームによるこのような行為は、消費者への損害や競争への影響をもたらす可能性があり、また、競争の欠如によりもたらされた可能性や反競争的行為が生み出した結果である可能性もある。
3 アンドリュー・ファーガソン委員長は、「テック企業はユーザーをいじめてはならず、この調査は、米国民が本音を語るのを封じ込めたり、抑圧したりすることで、これらの企業がいかにして法律に違反しているのかをFTCがよりよく理解することに役立つだろう。」とコメントした。
4 利用禁止、事実上の禁止(shadow banned)、収益化の禁止、その他の検閲を受けたテック・プラットフォームのユーザーは、RFIに回答することが推奨される。FTCは、テック企業のポリシーによって消費者が潜在的に不公正、欺瞞的行為・慣行又は不公正な競争方法を含めてどのような被害を受けているのかを理解することに関心がある。
【テック・プラットフォーム検閲に関する情報提供要請(RFI)】
FTCは、テック・プラットフォームが行っている可能性のあるユーザーの発言内容(当該プラットフォーム外で行われる活動を含む。)や所属に基づいて、ユーザーのサービスへのアクセスを拒否又は低下させる方法(「収益化の禁止」や「事実上の禁止」など)についてよりよく理解するために、広く一般から意見を募集する。テック・プラットフォームは、しばしば事前の通知なしに、ユーザーのサービスへのアクセスを制限するために、不透明又は予測不可能な内部手順を採用する可能性があり、影響を受けるユーザーは、関連する損害を軽減する手段をほとんど持たないままになる。また、ユーザーはプラットフォーム上での解約や格下げにつながったとされる違反について、ほとんど情報を得られない可能性がある。また同様に、テック・プラットフォームは、自社の決定に対して異議申立てや提訴を行う実質的な機会をユーザーに与えないかもしれない。テック・プラットフォームによるこのような行為は、サービス条件やその他のポリシー(以下このRFIにおいて「ポリシー」と総称する)に違反し、テック・プラットフォームの公的な表明に基づくユーザーの合理的な期待を裏切る可能性がある。競争に影響を及ぼす可能性のあるこのようなポリシー及び慣行は、競争の欠如から生じたものであったか、又は反競争的行為の結果であった可能性がある。
FTCの職員は、ユーザーが自由かつオープンにアイデアや所属を共有する能力を制限するような、テック・プラットフォームによる、潜在的に不公正又は欺瞞的な行為や慣行、あるいは潜在的に不公正な競争方法などの行為によって、消費者がどのように被害を受けたかを理解することに関心を持っている。FTC職員は、技術プラットフォームの現従業員及び元従業員を含む一般市民に対し、以下の質問を含むがこれに限定されない、このトピックに関するFTCの検討に関連するあらゆる問題又は懸念についてコメントすることを奨励する。
質問1 プラットフォームは、どのような状況において、ユーザーの発言内容や属性を理由にユーザーによるサービスへのアクセスを拒否又は制限(「事実上の禁止」、「収益化の禁止」など)したことがあるか?
質問2 プラットフォームは、不利益措置が行われた時点で、ユーザーのプラットフォーム内外での行為を規制、検閲又は制限する方法についてポリシーを定めたり、他の公的な表明を行っていたか?
質問3 プラットフォームは、サービスへのアクセスを拒否又は制限する不利益措置に対して、ユーザーが異議申立てや提訴を行うことができるかどうかを直接的又は間接的に示していたか?
質問4 プラットフォームの不利益措置は、ユーザー(コンテンツ・クリエーターを含む)にどのような影響を与えたか?
質問5 プラットフォームがポリシーを採用したり、不利益措置を講ずることを決断した要因はなにか?
質問6 プラットフォームによる不利益措置は、競争の欠如によって可能になったのか?プラットフォームの慣行やポリシーは競争に影響を与えたか?
https://www.ftc.gov/legal-library/browse/cases-proceedings/public-statements/concurring-dissenting-statement-commissioner-andrew-n-ferguson-joined-commissioner-melissa-holyoak