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独占禁止法違反被疑事件の行政調査手続の概要について(事業者等向け説明資料)

独占禁止法違反被疑事件の行政調査手続の概要について(事業者等向け説明資料)

令和2年12月
公正取引委員会

はじめに

 独占禁止法(正式名称:「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」)は,私的独占,不当な取引制限,不公正な取引方法等の行為を禁止し,事業活動の不当な拘束を排除することなどにより,公正かつ自由な競争を促進し,一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的としています。
 この目的を達成するため,公正取引委員会が設置されており,市場における基本ルールである独占禁止法を厳正・的確に執行し,競争秩序を早期に回復するための措置を講ずることが公正取引委員会に求められています。
 公正取引委員会は,独占禁止法に違反する行為が行われている疑いがある場合に,違反の有無を明らかにし,違反行為を排除するために必要な措置等を命じるため,違反行為を行っている疑いがある事業者等に対する調査権限を付与されており,行政調査手続において,法令に基づき手続の適正性を確保しつつ,罰則により間接的に履行を担保するという間接強制権限に基づいて,立入検査,提出命令,留置,出頭命令及び審尋,報告命令等の処分を行います。このほか,事業者等の任意の協力に基づいて,供述聴取,報告依頼等により事件調査を行います。
 公正取引委員会は,行政調査手続の適正性をより一層確保する観点から,これまでの実務を踏まえて行政調査手続の標準的な実施手順や留意事項等を「独占禁止法審査手続に関する指針」(以下「指針」といいます。)において明確化し,事件調査に携わる職員に周知徹底しています。また,同様の観点から,調査手続の透明性を高め,事件調査の円滑な実施に資するよう,指針を公表し,その内容を広く一般に共有しています(指針については,https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/shinsashishin.htmlに掲載されています。)。
 本資料は,これに併せて,指針の内容を踏まえ,公正取引委員会の行政調査手続における標準的な実施手順等について,事業者等向けに分かりやすく説明するものです。

独占禁止法違反被疑事件処理の流れ(行政調査)

※行政調査手続以外の各手続の概要については,「知ってなっとく独占禁止法」(事業者向けパンフレット)(https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/dokkinpamph.pdf)をご参照ください。

1.立入検査等 * 別添「独占禁止法違反被疑事件の行政調査における立入検査の流れ」参照

(1)法的根拠(指針第2の1(1)参照)

 公正取引委員会は,独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づき,違反行為を行っている疑いがある事業者等の営業所その他必要な場所に立ち入り,業務及び財産の状況,帳簿書類その他の物件を検査することができます。また,同項第3号の規定に基づき,事件調査に必要と考えられる帳簿書類その他の物件について,その所持者に提出を命じ,留置することができます。
 なお,正当な理由なく検査を拒み,妨げ,又は忌避した場合や物件を提出しない場合には,独占禁止法第94条の罰則が適用されることがあります。このように,独占禁止法第47条の規定に基づいて審査官(注1)が行う立入検査その他の処分は,事件調査の対象となる方にはこれを受忍する義務があり,罰則が適用されることがあるという意味で,調査に応じるか否かが全くの任意であるというものではありませんが,あえて拒否した場合に審査官が直接的物理的に実力を行使して強制し得るものではありません。
 また,独占禁止法第47条の規定に基づく間接強制力を伴う立入検査ではなく,事業所等に赴き,事業者等の任意の協力に基づいて資料の提出等を依頼する場合もあります。

(注1)公正取引委員会は,独占禁止法第47条第2項の規定により,職員を審査官として指定し,事件調査に当たらせています。以下では,審査官のほか事件調査に従事する職員を含めて「審査官等」といいます。

(2)立入検査の実施

ア 検査開始時の説明(指針第2の1(2)参照)
 立入検査に際して,審査官は,立入検査場所の責任者等に対し,身分を示す審査官証を提示した上で,行政調査の根拠条文(独占禁止法第47条),事件名,違反被疑事実の要旨,関係法条等を記載した告知書を交付し,検査の円滑な実施に協力を求めるとともに,検査に応じない場合には罰則が適用されることがある旨を説明します。
 なお,事業所等に赴き,事業者等の同意の下で資料の提出等を依頼する場合には,審査官等は,相手方に対し,身分証明書等を提示した上で,この調査の趣旨及び独占禁止法第47条の規定に基づくものではなく相手方の任意の協力に基づいて行うものであることを説明し,同意を得て行います。
イ 立入検査の対象範囲(指針第2の1(3)参照)
 立入検査は,違反行為を行っている疑いがある事業者等の営業部門,経理部門など,その名称にかかわらず,審査官が事件調査に必要であると合理的に判断した場所に対して行われます。また,従業員の居宅などであっても,違反被疑事実に関する資料が存在することが疑われ,審査官が事件調査に必要であると合理的に判断した場合には立入検査の対象となります。

(3)物件の提出及び留置(指針第2の1(4)ア・イ・エ参照)

 立入検査の結果,事件調査に必要であると考えられる物件について,事業者等に対して提出命令を行った上で,提出物件をお預かり(留置)します。提出の際には,物件の原物について,現状のまま提出することが求められます。サーバ,クライアントPC等に保存された電子データ(電子メール等のデータを含む。)については,それらのデータを複製・保存した記録媒体(必要に応じてクライアントPC等の本体)を提出することが求められます。
 なお,提出物件について,留置の必要がなくなった場合には,速やかにお返し(還付)します(注2)。
ア 提出を命じる物件の範囲
 物件の提出命令は,審査官が事件調査に必要であると合理的に判断した範囲で行われるものです。個人の所有物のように,一般にプライバシー性の高いもの(手帳,携帯電話等)であっても,違反被疑事実の立証に資する情報が含まれていることが疑われるため,審査官が必要であると判断した場合には提出することが求められます。
イ 物件の目録との照合
 物件の提出命令及び留置の際には,審査官等が,対象となる物件の品目を記載した目録を作成し,「提出命令書」,「留置物に係る通知書」に添付します。その目録には,帳簿書類その他の物件の標題等を記載するとともに,所在していた場所や所持者,管理者等を記載して,その物件を特定することとしています。物件の留置に当たっては,提出命令の対象となった全ての物件について,検査場所の責任者等の面前で一点ずつ提示し,目録の記載との照合を行います。

(注2)判別手続(公正取引委員会の行政調査手続において提出を命じられた,課徴金減免対象被疑行為に関する法的意見について事業者と弁護士との間で秘密に行われた通信の内容を記録した物件で,一定の条件を満たすことが確認されたものは,審査官がその内容にアクセスすることなく速やかに事業者に還付する手続)については,https://www.jftc.go.jp/dk/seido/hanbetsu/index.htmlをご参照ください。

(4)提出物件の閲覧・謄写(指針第2の1(4)ウ参照)

 立入検査当日においては,審査官の判断により,日々の事業活動に用いる必要があると認められるものについて,立入検査の円滑な実施に支障がない範囲で,提出物件の謄写の求めに応じることとしています。また,物件の提出命令を受けた事業者等は,事件調査に支障を生じない範囲で,立入検査の翌日以降,日程調整を行った上で,公正取引委員会が指定する場所において,提出物件(留置物)を閲覧・謄写することができます。日程調整に当たっては,できる限り早期に閲覧・謄写できるよう配慮することとしています。
 なお,謄写の方法については,事業者等所有の複写機だけではなく,デジタルカメラ,スキャナー等の電子機器を用いることもできます。

(5)立入検査における弁護士の立会い(指針第2の1(5)参照)

 立入検査においては,立入検査場所の責任者等に立ち会っていただくほか,立入検査の円滑な実施に支障がない範囲で弁護士を立ち会わせることもできます。ただし,弁護士の立会いがないと立入検査を行うことができないというものではありませんので,弁護士が到着しないことを理由に立入検査を拒むことはできません。

2.供述聴取

(1)法的根拠(指針第2の2(1)参照)

 供述聴取には,任意の供述聴取と間接強制力を伴う審尋があります。任意の供述聴取は,聴取を受ける方の任意の協力に基づいて行うものであり,審尋は,独占禁止法第47条第1項第1号の規定に基づいて,審尋を受ける方に出頭を命じた上で聴取を行うものです。通常は,任意の供述聴取によって行われます。
 なお,審尋の場合には,審尋を受ける方が正当な理由なく出頭しない場合や,陳述をしない又は虚偽の陳述をした場合には,独占禁止法第94条の罰則が適用されることがあります。

(2)供述聴取に関する手続(指針第2の2(2)参照)

ア 任意の供述聴取
[1] 審査官等が,あらかじめ聴取を受ける方の都合を確認し,その都度,任意の供述聴取である旨を説明した上で,同意を得て行います。
[2] 任意の供述聴取(初回)を始めるに当たっては,審査官等は,聴取を受ける方に対して,身分証明書等を提示した上で,任意の供述聴取である旨を説明します。ただし,任意の供述聴取であっても,事案の実態解明のためには,自らの経験・認識に基づいて事実を話していただく必要があることから,御協力をお願いしています。また,任意の供述聴取に御協力いただけない場合には,審尋の手続に移行することがあります。
イ 審尋
[1] 独占禁止法第47条の規定に基づいて,出頭を命じて審尋を行う場合は,その都度,審尋を受ける方に対して,出頭命令書を送達して行います。出頭命令書には,法的根拠,出頭すべき日時及び場所,命令に応じない場合の罰則について記載されています。
[2] 審尋を始めるに当たっては,審査官は,審尋を受ける方に対して,審査官証を提示した上で,独占禁止法第47条の規定に基づくものである旨,陳述をしない又は虚偽の陳述をした場合には罰則が適用されることがある旨を説明します。
ウ 供述を録取した書面(調書)は,意見聴取手続(独占禁止法第49条等)において閲覧・謄写の対象となる可能性があります(注3)。

(注3)事業者等が,意見聴取手続において閲覧・謄写した供述調書等の内容をもって,自社従業員に対する懲戒等の不利益取扱い,他の事業者に対する報復行為等を行う可能性があるときは,「第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるとき」(独占禁止法第52条)に該当し,公正取引委員会はその供述調書等の閲覧・謄写を拒むことができます。このように,事業者等が閲覧・謄写した内容を意見聴取手続又は排除措置命令等の取消訴訟の準備以外に利用することは目的外利用となるため,閲覧・謄写の申請書の様式には,申請者が目的外利用はしないことを約す一文が置かれています。

(3)供述聴取時の留意事項(指針第2の2(3)参照)

 供述聴取時における弁護士を含む第三者の立会い(審査官等が聴取の適正円滑な実施の観点から依頼した通訳人,弁護士等は除きます。),供述聴取過程の録音・録画,供述聴取を受ける方の聴取中のメモ(審査官等が聴取の適正円滑な実施の観点から認めた書き取りは含みません。)については,事案の実態解明の妨げになるおそれがありますので,認められません。また,同様の理由で,調書作成時における調書の写しの交付は行いません(注4)。

(注4)審査官等は,聴取を受けた方が課徴金減免制度を利用した事業者の役員及び従業員等である場合において,当該聴取を受けた方からの求めがあったときは,供述聴取終了後その場で,当該聴取を受けた方による供述内容に係るメモの作成を認めるとともに,当該メモの作成のために必要な範囲で当該聴取を受けた方からの質問に応じます。

(4)聴取時間・休憩時間(指針第2の2(4)参照)

ア 供述聴取は,原則として1日につき8時間まで(休憩時間を除きます。)とします。聴取時間が1日につき8時間を超える場合には,聴取を受ける方の同意を得ることとしています。また,やむを得ない事情がない限り,深夜(午後10時以降)に及ぶ聴取は行わないこととしています。
イ 供述聴取において,聴取が長時間となる場合には,審査官等は,聴取を受ける方の体調等も考慮した上で,休憩時間を適時適切に確保することとしています。
 なお,休憩時間には,原則として聴取を受ける方の行動は制約されず,指定された休憩時間内であれば,弁護士等の外部の者と連絡を取ることや記憶に基づいてメモを取ることは妨げられません。ただし,複数の関係者に対して同じ日の近い時間帯に聴取を実施する場合など,休憩時間に聴取を受ける方が他の事件関係者と接触して,供述内容の調整(口裏合わせ等)が行われるなどのおそれがあるときは,例外的に,審査官等が付き添うことがあります。
 また,食事時間などの比較的長めの休憩時間を取る場合には,供述聴取に支障が生じない範囲で,聴取を受ける方が必要に応じて弁護士等に相談することもできるよう適切な時間を確保するようにしています。

(5)調書の作成・署名押印の際の手続(指針第2の2(5)参照)

ア 審査官等は,任意の供述聴取を行った場合に,必要があると認めるときは,供述調書を作成します。また,審査官は,独占禁止法第47条の規定に基づいて審尋を行ったときは,審尋調書を作成しなければならないこととされています。
イ 供述調書又は審尋調書は,聴取を受けた方からお聞きした内容のうち,審査官等が,事案の実態解明に向けて,それまでに収集した様々な物的証拠や供述等を総合的に考慮した上で,当該事件に関係し,かつ,必要と認める内容について,正確に録取して作成するものです。聴取を受けた方がお話しいただいたことを速記録のように一言一句録取するものではありません。
ウ 供述調書又は審尋調書を作成した場合には,聴取を受けた方に,審査官等が読み上げる調書の内容を聞いていただき,又は調書を自らお読みいただくことにより,その記載に誤りがないかどうかを確認の上で,誤りのないときは,署名押印をいただくこととしています。その際,調書の記載に誤りがあれば,自ら供述した内容についての増減変更(調書の記載の追加,削除,訂正)の申立てをすることができます。聴取を受けた方から申立てがあったときは,審査官等がその趣旨を十分に確認した上で,その申立ての内容を調書に記載し又は該当部分を修正し,署名押印をいただくこととしています。

3.報告命令等

(1)法的根拠(指針第2の3(1)参照)

 公正取引委員会は,独占禁止法第47条第1項第1号の規定に基づき,違反行為を行っている疑いがある事業者等に対して,事件調査に必要な情報について,報告を求めることができます。これに違反して,報告をしない場合又は虚偽の報告をした場合には,独占禁止法第94条の罰則が適用されることがあります。
 なお,独占禁止法第47条の規定に基づく間接強制力を伴う報告命令ではなく,事業者等の任意の協力に基づいて報告を依頼する場合もあります。

(2)報告命令時の手続(指針第2の3(2)参照)

 独占禁止法第47条の規定に基づき,違反行為を行っている疑いがある事業者等に対して報告を求める場合は,報告書(回答)の様式を添付した上で,報告命令書を送達して行います。報告命令書には,法的根拠,報告の期限,命令に応じない場合の罰則について記載されています。
 なお,事業者等の任意の協力に基づいて報告を依頼する場合には,通常,書面(報告書(回答)の様式を添付し,報告の期限を記載した報告依頼書等)を送付して行います。

審査官の処分に対する異議申立て・任意の供述聴取に関する苦情申立て

 独占禁止法第47条の規定に基づいて審査官がした立入検査,審尋等の処分に不服があるときは,その対象となった事業者等は,処分を受けた日から1週間以内に,その理由を記載した文書をもって,公正取引委員会に異議の申立てをすることができます(公正取引委員会の審査に関する規則第22条)。
 また,任意の供述聴取については,供述聴取において指針「第2の2 供述聴取」に反する審査官等の言動等があったとの苦情がある場合には,聴取を受けた方等は,その聴取を受けた日から1週間以内に,書面により,公正取引委員会に苦情を申し立てることができます(任意の供述聴取に関する苦情申立制度については,https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/moushitate.htmlをご参照ください。)。

 なお,上記の手続以外でも,事件担当部署に対して,調査手法についての申入れのほか調査中の事件に関して御意見をいただいた場合には,誠意をもってこれに対応することとしています。

独占禁止法違反被疑事件の行政調査における立入検査の流れ

関連ファイル

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