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(令和2年6月24日)令和元年度における消費税転嫁対策の取組と今後の取組について

(令和2年6月24日)令和元年度における消費税転嫁対策の取組と今後の取組について

令和2年6月24日
公正取引委員会

はじめに

 公正取引委員会は,平成26年4月1日及び令和元年10月1日の消費税率の引上げを踏まえ,消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から,「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(平成25年法律第41号。以下「消費税転嫁対策特別措置法」という。)に基づき,消費税の転嫁拒否等の行為(以下「転嫁拒否行為」という。)に対する迅速かつ厳正な対処のための取組と,転嫁拒否行為の未然防止のための取組を進めてきた。
  令和元年度においては,令和元年10月1日の消費税率10%への引上げに向けて,転嫁拒否行為の未然防止を図ることにより重点を置いて,以下のとおり,各種の取組を実施してきた。
  消費税率10%への引上げ後は,書面調査等により転嫁拒否行為に関する情報収集を積極的に行い,転嫁拒否行為に対して迅速かつ厳正に対処しているところ,今後もかかる取組を継続していく。

第1 転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組

1 転嫁拒否行為に関する情報収集

(1) 転嫁拒否行為等についての相談対応
 公正取引委員会は,転嫁拒否行為等に関する事業者からの相談や情報提供を一元的に受け付けるための相談窓口を,本局及び全国の地方事務所等に設置している。令和元年度においては,消費税率10%への引上げに対応するため,前年度比約4倍となる2,102件の相談に対応した(第1表参照)。相談件数としては,消費税率8%への引上げ直前期の平成25年度の件数(3,179件)に次ぐものとなっている。

第1表:転嫁拒否行為等に関する相談件数
年度
件数
令和元年度 2,102
平成30年度
493
累計(注1)
8,578

 (注1)  平成25年10月から令和2年3月までの累計。
   (注2) 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出に関する相談件数並びに情報提供件数を含む。

(2) 事業者及び事業者団体に対するヒアリング調査
 公正取引委員会は,様々な業界における転嫁拒否行為に関する情報や取引実態を把握するため,事業者及び事業者団体に対してヒアリング調査を実施している。令和元年度においては,消費税率10%への引上げに係る転嫁拒否行為に関する情報を積極的に収集するため,前年度比約2倍の件数(1,648名の事業者及び559の事業者団体)のヒアリング調査を実施した(第2表参照)。

第2表:事業者及び事業者団体に対するヒアリング調査の実施件数
年度
件数
事業者
事業者団体
令和元年度 1,648 559
平成30年度
832
208
累計(注)
20,288
4,040

 (注)  平成25年10月から令和2年3月までの累計。

(3) 移動相談会
 公正取引委員会は,事業者にとって,より一層相談しやすい環境を整備するため,全国各地で移動相談会を実施している。令和元年度においては,消費税率10%への引上げに係る事業者からの相談に積極的に対応するため,全国の都道府県において移動相談会を前年度比約2倍の85回実施した(第3表参照)。

第3表:移動相談会の実施回数
年度
回数
令和元年度 85
平成30年度
50
累計(注)
388

 (注)  平成25年度から令和元年度までの累計。

(4) 書面調査
ア 中小企業・小規模事業者等(売手側)に対する書面調査
 公正取引委員会は,転嫁拒否行為を受けた事業者にとって自らその事実を申し出にくい場合もあると考えられることから,転嫁拒否行為を受けた事業者からの情報提供を受身的に待つだけではなく,書面調査を実施し,転嫁拒否行為に関する情報収集を積極的に行うこととしている。
(ア)  消費税率10%への引上げ前の書面調査
 公正取引委員会は,令和元年度においては,消費税率10%への引上げに際し,事業者間では消費税率の引上げ日前のより早い段階から新税率を前提とした価格交渉が始まることを想定して,転嫁拒否行為に関する情報収集及び転嫁拒否行為の未然防止の観点から,令和元年5月,中小企業庁と合同で,中小企業・小規模事業者等(約30万名)に対する書面調査を実施した。
(イ)  消費税率10%への引上げ後の書面調査
 消費税率10%への引上げ後においては,消費税率10%への引上げに係る転嫁拒否行為に関する情報を収集するため,令和元年10月以降,中小企業庁と合同で,中小企業・小規模事業者等(約280万名)及び個人事業者(約340万名)に対する悉皆的な書面調査を実施した。

イ  消費税率10%への引上げ前の大規模小売事業者・大企業等(買手側)に対する書面調査
 公正取引委員会は,転嫁拒否行為に関する情報収集及び転嫁拒否行為の未然防止の観点から,令和元年5月,大規模小売事業者・大企業等(約8万名)に対し,消費税転嫁対策特別措置法第15条第1項に基づく報告義務を課した書面調査を実施した。

ウ 下請法の書面調査等の活用
 公正取引委員会は,「下請代金支払遅延等防止法」(昭和31年法律第120号。以下「下請法」という。)の書面調査等を通じて,転嫁拒否行為に関する情報も併せて収集し,転嫁拒否行為に関する情報が得られた場合には,速やかに調査を行うとともに,消費税転嫁対策特別措置法に基づく調査において,下請法に違反する事実が判明した場合には,下請法に基づき迅速かつ厳正に対処するなど,下請法と一体的に効率的な運用を行っている。

2 転嫁拒否行為に対する処理状況

(1) 措置件数
 公正取引委員会は,様々な情報収集活動によって把握した情報を踏まえ,立入検査等の調査を積極的に実施しており,違反行為が認められた事業者に対しては違反行為を取りやめさせるとともに,転嫁拒否行為に係る不利益の回復などの必要な改善措置を講ずるよう,勧告又は指導を迅速に行っている。
 令和元年度は,勧告6件,指導743件の措置を講じている(第4表参照)。勧告については,勧告を行うとともに,違反行為を行った特定事業者(注1)の名称,違反行為の概要等を公表している(勧告の概要は別紙1,主な指導の概要は別紙2参照)。このうち消費税率10%への引上げに係る転嫁拒否行為に対する勧告は1件,指導は120件である(消費税転嫁対策特別措置法施行後の措置件数の推移及び消費税率10%への引上げに係る転嫁拒否行為の件数については,参考参照)。
 なお,措置件数(勧告又は指導を行った事件の件数をいう。以下同じ。)749件の地区ごとの内訳は,第5表のとおりである。
(注1) 特定事業者とは,[1]大規模小売事業者,[2]特定供給事業者(注2)から継続して商品又は役務の供給を受ける法人事業者である。
(注2) 特定供給事業者とは,[1]大規模小売事業者に継続して商品又は役務を供給する事業者,[2]資本金等の額が3億円以下である事業者,個人事業者等である。

第4表:措置件数[単位:件]

年  度

令和元年度
平成30年度
累計(注1)
措  置

勧  告

6
《0》
5
《3》
54
《11》

指  導

743
《18》
295
《16》
3,159
《174》

合  計

749
《18》
300
《19》
3,213
《185》
違反事実なし
130
107
1,536

(注1) 平成25年10月から令和2年3月までの累計。
(注2) 《 》内の件数は,大規模小売事業者に対する措置件数で内数。

第5表:措置件数(749件)の地区ごとの内訳[単位:件]
地 区
令和元年度
平成30年度
累計
(注1)

北海道地区(北海道)

31( 4.1)
11( 3.7)
123( 3.8)

東北地区(青森県,岩手県,宮城県,秋田県,山形県,福島県)

46( 6.1)
11( 3.7)
169( 5.3)

関東甲信越地区(茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,新潟県,山梨県,長野県)

341(45.5)
128(42.7)
1,365(42.5)

中部地区(富山県,石川県,岐阜県,静岡県,愛知県,三重県)

74( 9.9)
19( 6.3)
379(11.8)

近畿地区(福井県,滋賀県,京都府,大阪府,兵庫県,奈良県,和歌山県)

128(17.1)
56(18.7)
482(15.0)

中国地区(鳥取県,島根県,岡山県,広島県,山口県)

47( 6.3)
25( 8.3)
225( 7.0)

四国地区(徳島県,香川県,愛媛県,高知県)

21( 2.8)
15( 5.0)
132( 4.1)

九州地区(福岡県,佐賀県,長崎県,熊本県,大分県,宮崎県,鹿児島県)

53( 7.1)
30(10.0)
295( 9.2)

沖縄地区(沖縄県)

8( 1.1)
5( 1.7)
43( 1.3)
合計
749( 100)
300( 100)
3,213( 100)

(注1) 平成25年10月から令和2年3月までの累計。
(注2) 措置の対象となった特定事業者の本店所在地により区分している。
(注3) 地区ごとの運用状況等については別途公表することとしている。
(注4)   ( )内の数値は合計値に占める割合であり,小数点以下第2位を四捨五入しているため,その合計は必ずしも100とならない。

(2) 措置件数の業種別内訳
 令和元年度に措置の対象となった特定事業者について,業種別に分類すると,製造業が107件(14.3%)と最も多く,建設業86件(11.5%),小売業85件(11.3%)がこれに続いている(第6表及び第1図参照)。

第6表:措置件数の内訳(業種別)[単位:件(%)]
業種
令和元年度
平成30年度
累計(注1)
建設業
86(11.5)
48(16.0)
374(11.6)
製造業
107(14.3)
78(26.0)
739(23.0)
情報通信業
55( 7.3)
18( 6.0)
271( 8.4)
運輸業
26( 3.5)
13( 4.3)
170( 5.3)
卸売業
57( 7.6)
17( 5.7)
231( 7.2)
小売業
85(11.3)
39(13.0)
369(11.5)
不動産業
69( 9.2)
19( 6.3)
180( 5.6)
技術サービス業
19( 2.5)
11( 3.7)
144( 4.5)
学校教育・
教育支援業
14( 1.9)
6( 2.0)
70( 2.2)
その他
231(30.8)
51(17.0)
665(20.7)
合計
749( 100)
300( 100)
3,213( 100)

(注1) 平成25年10月から令和2年3月までの累計。
(注2) 複数の業種にわたる場合は,当該事業者の主たる業種により分類している。「その他」は娯楽業,金融・保険業,医療福祉等である。
(注3) ( )内の数値は合計値に占める割合であり,小数点以下第2位を四捨五入しているため,その合計は必ずしも100とならない。

(3) 措置件数の行為類型別内訳
 令和元年度の措置件数について行為類型別に分類すると,減額(消費税転嫁対策特別措置法第3条第1号前段)が218件(23.5%),買いたたき(同法第3条第1号後段)が668件(72.0%),役務利用又は利益提供の要請(同法第3条第2号)が21件(2.3%),本体価格での交渉の拒否(同法第3条第3号)が21件(2.3%)となっている(第7表及び第2図参照)。

第7表:措置件数の内訳(行為類型別)[単位:件(%)]
行為類型
令和元年度
平成30年度
累計(注1)
減額
218(23.5)
23( 7.2)
350(10.0)
買いたたき
668(72.0)
295(92.2)
2,799(80.2)
役務利用又は
利益提供の要請
21( 2.3)
0( 0.0)
70( 2.0)
本体価格での
交渉の拒否
21( 2.3)
2( 0.6)
272( 7.8)
合計
928( 100)
320( 100)
3,491( 100)

(注1) 平成25年10月から令和2年3月までの累計。
(注2) 事業者の中には,複数の行為を行っている場合があり,「合計」の件数は第4表から第6表に記載の措置件数とは一致しない。
(注3)  ( )内の数値は合計値に占める割合であり,小数点以下第2位を四捨五入しているため,その合計は必ずしも100とならない。

(4) 特定供給事業者が被った不利益の原状回復の状況
 令和元年度において,転嫁拒否行為によって特定供給事業者が被った不利益については,特定事業者276名から,特定供給事業者68,951名に対し,総額38億2122万円の原状回復が行われた(第8表参照。消費税転嫁対策特別措置法施行後の原状回復額の推移については,参考参照)。行為類型別の原状回復の状況は第9表のとおりである。また,原状回復額に関し,転嫁拒否行為を行った特定事業者について,業種別にみると,不動産業が最も多く(30億8729万円,80.8%),情報通信業(2億8096万円,7.4%),小売業(8782万円,2.3%)がこれに続いている(第3図参照)。

第8表:特定供給事業者が被った不利益の原状回復の状況
年度
原状回復を行った特定事業者数
原状回復を受けた特定供給事業者数
原状回復額(注2)
令和元年度 276名
68,951名
38億2122万円
平成30年度
273名
45,072名
8億1517万円
累計(注1)
1,760名
230,011名
74億6204万円

(注1)   平成26年4月から令和2年3月までの累計。
(注2) 原状回復額は1万円未満を切り捨てている。

第9表:行為類型別の原状回復の状況
行為類型
年度
原状回復を行った
特定事業者数
原状回復を受けた
特定供給事業者数
原状回復額(注3)
減額
令和元年度
30名
22,067名
7988万円
平成30年度
25名
2,704名
847万円
買いたたき
令和元年度
262名
46,884名
37億4133万円
平成30年度
266名
42,368名
8億669万円
合計
令和元年度
292名
68,951名
38億2122万円
平成30年度
291名
45,072名
8億1517万円
累計(注1)
1,836名
230,074名
74億6204万円

(注1) 平成26年4月から令和2年3月までの累計。
(注2) 特定事業者数及び特定供給事業者数は延べ数であり,合計の値は第8表に記載の事業者数とは必ずしも一致しない。
(注3) 原状回復額は1万円未満を切り捨てている。

第2 転嫁拒否行為の未然防止のための取組

 公正取引委員会は,消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保することを目的として,消費税転嫁対策特別措置法の周知等,転嫁拒否行為を未然に防止するための各種施策を実施している。令和元年度においては,消費税率10%への引上げに向けて,以下のとおり,転嫁拒否行為の未然防止のために各種の取組を積極的に行った。

1 消費税転嫁対策特別措置法等に係る説明会の開催や講師派遣

 公正取引委員会は,消費税転嫁対策特別措置法等に係る説明会の開催や,講師の派遣を実施しているところ,令和元年度は,消費税率10%への引上げに係る転嫁拒否行為の未然防止の観点から,全都道府県で74回の説明会を実施するとともに(第10表参照),商工会議所,商工会,事業者団体等が開催する説明会に,当委員会の職員を講師として59回派遣した(第11表参照)。

第10表:公正取引委員会主催説明会の実施回数
年度
回数
令和元年度 74回
平成30年度
50回
累計(注)
323回

(注) 平成25年年度から令和元年度までの累計。

第11表:講師の派遣回数
年度
回数
令和元年度 59回
平成30年度
20回
累計(注)
637回

(注)平成25年度から令和元年度までの累計。

2   事業者に対する消費税転嫁対策特別措置法等の遵守の徹底の要請

 消費税率10%への引上げに向けて,令和元年6月27日,事業者(20万名)に対し,消費税転嫁対策特別措置法等の遵守の徹底について,公正取引委員会委員長及び経済産業大臣の連名の文書をもって,要請を行った。
 

3 事業者等向けパンフレットの改訂・配布

 公正取引委員会は,消費税転嫁対策特別措置法等の内容を分かりやすく説明した事業者等向けパンフレット「消費税の円滑かつ適正な転嫁のために」を関係省庁と協力して作成している。令和元年度においては,消費税率引上げ及び軽減税率制度の実施に向けて,想定される消費税転嫁対策特別措置法の違反事例を紹介したパンフレット「消費税の転嫁拒否に関する主な違反事例」を改訂した上で,「消費税の円滑かつ適正な転嫁のために」と併せて,全国の商工会議所,商工会,地方公共団体等に約50万部配布した(注)。
   (注) https://www.jftc.go.jp/tenkataisaku/pamphlet.html

4 公正取引委員会ウェブサイト「消費税転嫁対策コーナー」における情報提供及び消費税転嫁対策についての特設ページの開設

 公正取引委員会は,当委員会のウェブサイトの消費税転嫁対策コーナーに上記3の事業者等向けパンフレット等の各種資料を掲載しているほか,消費税転嫁対策特別措置法の運用を踏まえて,「消費税の転嫁拒否等の行為に関するよくある質問」を作成し,上記の消費税転嫁対策コーナーに掲載している(注)
   令和元年度においては,「消費税の転嫁拒否等の行為に関するよくある質問」に軽減税率制度の実施に関連する質問を追加するとともに,消費税率引上げ前の9月に,上記の消費税転嫁対策コーナーに特設ページを開設し,転嫁拒否行為の未然防止のための動画コンテンツを掲載し,同コンテンツを閲覧した事業者に転嫁拒否行為の未然防止のためのセルフチェックを促した。
 (注) https://www.jftc.go.jp/tenkataisaku/tenka-FAQ.html

5 転嫁拒否行為の未然防止に係る集中的な広報

 公正取引委員会は,消費税率10%への引上げに向けて,転嫁拒否行為が禁止されていること,転嫁拒否行為に対して当委員会が厳しく監視していること及び転嫁拒否行為に関する積極的な情報提供を求めていることを広く周知するため,各種媒体を活用した事業者向け広報を実施している。
 令和元年度においては,消費税率引上げ直前の9月から引上げ直後の10月までの2か月間にわたって,新聞,雑誌,交通広告,バナー広告等を活用した事業者向け広報を実施し,転嫁拒否行為が禁止されていること等を積極的に周知した(別紙3参照)。

第3 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出

 消費税転嫁対策特別措置法は,消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保するため,事業者又は事業者団体が行う,消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為(転嫁カルテル)及び消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為(表示カルテル)について,公正取引委員会に事前に届け出ることにより独占禁止法に違反することなく行うことができるものとしている。
 令和元年度においては,転嫁カルテルの届出を8件受け付けた。平成25年10月から令和2年3月末までに,転嫁カルテルについては202件,表示カルテルについては140件の届出を受け付けている。
 また,届出の方法等について,令和元年度においては,26件の相談に対応した(別紙4参照)。
 なお,公正取引委員会のウェブサイトに,「届出に関するよくある質問」(注1)を掲載しているほか,転嫁カルテル及び表示カルテルの届出状況につき,届出を受け付けた月ごとに取りまとめて掲載している(注2)
(注1) https://www.jftc.go.jp/tenkataisaku/todokede-shitumon.html
(注2) https://www.jftc.go.jp/tenkataisaku/tenka-hyoujitodokede.html

第4 今後の取組

 公正取引委員会としては,消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から,消費税転嫁対策特別措置法に基づき,引き続き,以下のとおり,各種の取組を行っていく。

1 消費税率引上げ後の書面調査の実施

 消費税率 10%への引上げに係る転嫁拒否行為に関する情報を収集するため,5月以降,大規模小売事業者・大企業等(約8万名)に対する消費税転嫁対策特別措置法第15条第1項に基づく報告義務を課した書面調査を実施するとともに,中小企業庁と共同で,中小企業・小規模事業者等(約280万名)及び個人事業者(約340万名)に対する悉皆的な書面調査を実施していく。

2 事業者及び事業者団体に対するヒアリング調査

 消費税率 10%への引上げに係る転嫁拒否行為に関する情報収集のため,引き続き,事業者及び事業者団体に対するヒアリング調査を実施していく。

3 転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処

 上記書面調査やヒアリング調査等によって把握した転嫁拒否行為に対しては,引き続き,消費税転嫁対策特別措置法に基づき,迅速かつ厳正に対処していく。

4 転嫁拒否行為等についての相談対応

 本局及び全国の地方事務所等に設置した相談窓口において,事業者から寄せられる転嫁拒否行為等に係る相談や情報提供に適切に対応していく。

5 消費税転嫁対策特別措置法の周知

 上記第2の3に記載したパンフレット「消費税の円滑かつ適正な転嫁のために」等の商工会議所等への配布,消費税転嫁対策特別措置法等に係る説明会の開催,事業者団体等が開催する説明会への当委員会の職員の講師派遣及び各種メディアを活用した集中的な広報を通じて,引き続き,消費税転嫁対策特別措置法の周知に努めていく。

参考1:消費税転嫁対策特別措置法施行後の措置件数(勧告又は指導の件数)及び原状回復額の推移

※ 原状回復額は1万円未満を切り捨てている。
※ 平成25年度は平成25年10月から平成26年3月までの措置件数。

参考2:消費税率8%への引上げ後の半年間の措置件数と消費税10% への引上げ後の半年間の措置件数について

 
勧告
指導
合計
消費税率8%への引上げ後の半年間の措置件数
<平成26年4月~平成26年9月>
10
104
114
消費税率10%への引上げ後の半年間の措置件数
<令和元年10月~令和2年3月>
1
167
168
 
消費税率10%への引上げに係る措置件数 ※
1
120
121

※ 「消費税率10%への引上げに係る措置件数」は,「消費税率10%への引上げ後の半年間の措置件数」(全体)のうち,消費税率8%から10%への引上げに際して行われた転嫁拒否行為に対する措置件数のことをいう。

別紙1 勧告事件(6件)(平成31年4月~令和2年3月)

[1] ㈱リクルートホールディングスに対する件(令和元年5月24日)

特定事業者

㈱リクルートホールディングス

事業内容

持株会社(注1)

取引の内容

原稿作成業務の委託

違反行為の概要

【減額(第3条第1号前段)】
 原稿作成事業者の一部に対し,消費税相当分又は消費税率の引上げ分の全部若しくは一部に相当する額を減じて原稿作成業務の委託料を支払った。

原状回復額

特定供給事業者1,458名に対し,総額5904万9471円

(注1)㈱リクルートホールディングスは平成30年3月31日まで就職・転職,住宅,旅行,飲食等に関する情報の提供等の事業を営んでおり,平成30年4月1日から㈱リクルートが同事業を承継。
(注2)事件の詳細については,以下のリンク先を参照。
  https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/may/190524kankoku.html

[2] ㈱リクルートに対する件(令和元年5月24日)

特定事業者

㈱リクルート

事業内容

就職・転職,住宅,旅行,飲食等に関する情報の提供等

取引の内容

原稿作成業務の委託

違反行為の概要

【減額(第3条第1号前段)】
 原稿作成事業者の一部に対し,消費税相当分又は消費税率の引上げ分の一部に相当する額を減じて原稿作成業務の委託料を支払った。

原状回復額

特定供給事業者322名に対し,総額518万9686円

(注) 事件の詳細については,以下のリンク先を参照。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/may/190524kankoku.html

[3] ㈱中日新聞社に対する件(令和元年9月20日)

特定事業者

㈱中日新聞社

事業内容

日刊新聞等の発行及び販売,カルチャー教室の運営等

取引の内容

[1] 原稿作成業務の委託
[2] 日刊新聞等の輸送業務の委託
[3]   カルチャー教室の講師業務の委託
[4] 事務所等の賃借

違反行為の概要

【買いたたき(第3条第1号後段)】
 日刊新聞等の発行及び販売等の事業を営む㈱中日新聞社は,
① 原稿作成業務を委託している事業者の一部に対し,消費税率の引上げ分を上乗せせずに委託料を据え置いて支払った。
② 日刊新聞等の輸送業務を委託している事業者の一部に対し,消費税率の引上げ分を上乗せせずに委託料を据え置いて支払った。
③ カルチャー教室の講師業務を委託している事業者の一部に対し,消費税率の引上げ分を上乗せせずに委託料を据え置いて支払った。
④ 事務所等の賃貸人の一部に対し,消費税率の引上げ分を上乗せせずに賃料を据え置いて支払った。

原状回復額

特定供給事業者2,500名に対し,総額1億4548万7413円

(注) 事件の詳細については,以下のリンク先を参照。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/sep/190920kankoku.html

[4] 大東建託㈱に対する件(令和元年9月24日)

特定事業者

大東建託㈱

事業内容

建築工事業等

取引の内容

駐車場等の賃借

違反行為の概要

【買いたたき(第3条第1号後段)】
 自ら使用する駐車場等の賃貸人の一部に対し,消費税率の引上げ分を上乗せせずに賃料を据え置いて支払った。

原状回復額

特定供給事業者109名に対し,総額1161万3909円

(注) 事件の詳細については,以下のリンク先を参照。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/sep/190924kankoku.html

[5] 大東建託パートナーズ㈱に対する件(令和元年9月24日)

特定事業者

大東建託パートナーズ㈱

事業内容

不動産賃貸業等

取引の内容

転貸非居住用物件の賃借

違反行為の概要

【買いたたき(第3条第1号後段)】
 利用者に転貸するための駐車場等を自社に賃貸するオーナーの一部に対し,借上賃料について,利用者から受け取る転貸賃料を消費税率の引上げ前までと同額で定め,当該転貸賃料から消費税率の引上げ分を上乗せした自社の運営管理費等を差し引くことにより,消費税率の引上げ前よりも低い額で支払った。

原状回復額

特定供給事業者32,109名に対し,総額30億6150万2621円

(注) 事件の詳細については,以下のリンク先を参照。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/sep/190924kankoku.html

[6] ㈱カルチャーに対する件(令和元年12月12日)

特定事業者

㈱カルチャー

事業内容

カルチャー教室の運営等

取引の内容

講師業務の委託

違反行為の概要

【買いたたき(第3条第1号後段)】
 講師業務を委託している事業者に対し,受講料の額に一定率を乗じて算出した額に消費税相当分を加えた額を委託料として定め,支払っているところ,一部の事業者に対し,令和元年10月1日の消費税率10%への引上げに際し,一定率の数値を引き下げた。

原状回復額

― (注1)

(注1) ㈱カルチャーは,公正取引委員会の調査を受け,違反行為の概要に記載している引き下げた一定率による支払期日の到来前に,一定率の数値を元に戻し,当該率により算出した額に消費税率10%相当分を加えた額を委託料として支払った。このため,原状回復の措置を採る必要がなかった。
なお,違反行為の対象となった特定供給事業者数は,8,096名であった。(詳細については注2のリンク先を参照)。

(注2) 事件の詳細については,以下のリンク先を参照。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/dec/191212kankoku.html

別紙2 主な指導事例(平成31年4月~令和2年3月)

1 減額(第3条第1号前段)

[1] 大規模小売事業者であり,コンビニエンスストアを運営するA社は,店舗開発業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,委託代金を本体価格で定めているところ,本体価格に消費税相当額を上乗せせず支払うことにより,消費税相当額を減じていた。

[2] 大規模小売事業者であり,通信販売業を営むB社は,商品の納入業者(特定供給事業者)に対し,仕入代金を本体価格で定めて月単位で支払っているところ,納品ごとに本体価格に消費税率を乗じて1円未満の端数を切り捨てた額を消費税相当額として支払うことにより,支払対象期間の本体価格の合計額に消費税率を乗じて得られた消費税相当額から,その一部を減じていた。

[3] 陶磁器製造業を営むC社は,陶磁器の加工を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,委託代金を本体価格で定めているところ,令和元年10月1日以後も本体価格に旧税率(8%)を適用して支払うことにより,本体価格に新税率(10%)を適用した消費税込みの金額から減じていた。

[4] 機械製造業を営むD社は,自社システムの保守運用の業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,委託代金を本体価格で定めているところ,令和元年10月1日以後も本体価格に旧税率(8%)を適用して支払うことにより,本体価格に新税率(10%)を適用した消費税込みの金額から減じていた。

[5] E農業協同組合は,税務業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,委託代金を本体価格で定めているところ,本体価格に消費税相当額を上乗せせず支払うことにより,消費税相当額を減じていた。

[6] 電気通信工事業を営むF社は,資材の納入業者及び電気通信工事を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,仕入代金又は委託代金をそれぞれ本体価格で定めて月単位で支払うこととしているところ,納品又は検収ごとに本体価格に消費税率を乗じて1円未満の端数を切り捨てた額を消費税相当額として支払うことにより,支払対象期間の本体価格の合計額に消費税率を乗じて得られた消費税相当額から,その一部を減じていた。

[7] ゴルフ場を運営するG社は,燃料,食材,売店で販売する商品等の納入業者及び施設の維持管理を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,仕入代金又は委託代金をそれぞれ本体価格で定めて月単位で支払うこととしているところ,支払対象期間の本体価格の合計額に消費税相当額を上乗せした額が一定額を下回る場合には100円未満の端数を,一定額を超える場合には1,000円未満の端数を切り捨てて支払うことにより,消費税相当額の一部を減じていた。

2 買いたたき(第3条第1号後段)

[1] 講師派遣業を営むH社は,講師業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,令和元年10月1日以後の消費税込みの委託代金について,消費税率の引上げ分を上乗せした額よりも低く定めていた。

[2] 水道検針業等を営むI社は,水道検針業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,令和元年10月1日以後の消費税込みの委託代金について,消費税率の引上げ分を上乗せした額よりも低く定め,又は消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,据え置いていた。

[3] フィットネス施設等を運営するJ社は,インストラクター業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,令和元年10月1日以後の消費税込みの委託代金について,消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,据え置いていた。

[4] 著作者から著作物の提供を受け,雑誌等の出版業を営むK社は,著作者(特定供給事業者)に対し,出版書籍の定価(税抜き)の総額に一定率を乗じた額を消費税込みの印税(著作者に支払う報酬)として定めているところ,平成26年4月1日以後の消費税込みの印税の決定において,当該一定率について見直さなかった。

[5] 放送業を営むL社は,放送番組の制作業務等を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,令和元年10月1日以後の消費税込みの委託代金について,消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,据え置いていた。

[6] バイク便配送業を営むM社は,配送業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,令和元年10月1日以後の消費税込みの委託代金について,消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,据え置いていた。

[7] 建築工事業を営むN社は,建築工事を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,令和元年10月1日以後の消費税込みの委託代金について,消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,据え置いていた。

[8] 専門学校の運営を行うO社は,講師業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,令和元年10月1日以後の消費税込みの委託代金について,消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,据え置いていた。

[9] ガス等の小売業を営むP社は,検針,集金等の業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後の消費税込みの委託代金について,消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,据え置いていた。

[10] 共済事業を営むQ協同組合は,事務所,駐車場又は倉庫の賃貸人(特定供給事業者)に対し,平成26年4月分以後の消費税込みの賃料について,消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,据え置いていた。

[11] 不動産管理業を営むR社は,空調機据付工事又は清掃業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,令和元年10月1日以後の消費税込みの委託代金について,消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,据え置いていた。

3 本体価格での交渉の拒否(第3条第3号)

[1] 出版業を営むS社は,雑誌制作に係る業務を委託している事業者(特定供給事業者)との価格交渉において,従来から本体価格に消費税額を加えた税込価格を用いているところ,特定供給事業者からの本体価格で交渉を行いたい旨の申出を断ることにより,平成26年4月1日以後,本体価格での交渉を拒んでいた。

[2] 建築及び土木工事業を営むT社は,建築工事及び土木工事を委託している事業者(特定供給事業者)との価格交渉において,従来から本体価格に消費税額を加えた税込価格を用いているところ,消費税額の記載欄のない様式の請求書を指定することにより,平成26年4月1日以後,税込価格での交渉を余儀なくさせていた。

別紙3 公正取引委員会における消費税転嫁対策に係る集中的な広報について(令和元年9月~10月実施)

別紙4 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出状況(令和2年3月まで)

1 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出件数 [単位:件]

 
令和元年度
平成30年度
累計(注1)
 
うち政令指定組合(注2)
 
うち政令指定組合(注2)
 
うち政令指定組合(注2)
転嫁カルテル
8
0
0
0
202
32
表示カルテル
0
0
0
0
140
25
合計
8
0
0
0
342
57

(注1) 平成25年10月から令和2年3月までの累計。
(注2) 消費税転嫁対策特別措置法第13条第2項に基づき主務大臣への通知を要する組合からの届出である。

2 業種別届出件数 [単位:件]

 
転嫁カルテル
表示カルテル
累計(注1)
30


30











 
 
 
 
 

製造業

1
0
0
0
96
79
175

卸売業

1
0
0
0
60
49
109

小売業

4
0
0
0
55
45
100

サービス業

3
0
0
0
51
22
73

その他

0
0
0
0
29
10
39

合計

9
0
0
0
291
205
496

(注1) 平成25年10月から令和2年3月までの累計。
(注2) 複数の業種にわたる場合の届出があるので,年度合計の数字は上記「1」に記載の届出件数と一致しない。
(注3) 「その他」の業種は,運輸業,建設業等である。

3 届出に関する相談件数

年度
件数
令和元年度 26
平成30年度
12
累計(注)
1,339

(注) 平成25年10月から令和2年3月までの累計。

関連ファイル

問い合わせ先

問い合わせ先 公正取引委員会事務総局取引部消費税転嫁対策調査室
電話 03-3581-5479(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/

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